テスラに関してはよくないニュースがもう1つありました。米国テキサス州で、テスラ車がカーブを曲がりきれずに高い速度のまま衝突事故を起こし、車両が炎上。乗員2人が亡くなりました。ここまでは痛ましい交通事故ですが、ブルームバーグやロイターの記事を見てみると「衝突時に誰も運転していなかった」という可能性があるというのです。1人は助手席で、もう1人が後部座席で発見されたことや、物的証拠や複数の証言などからそのように分析されているようです。
テスラ CEOのイーロン・マスク氏は、この事故を起こした車両は運転支援システム「オートパイロット」が作動しておらず、さらに高度なシステムである「フルセルフドライビング」は装備していなかったとコメントしています。メディア各社は「誰も運転席にいなくても動作する“半自動運転システム”は問題なのではないか」という論調です。日本にいる以上、報道よりも詳しい情報が得られないので何ともいえませんが、センターコンソールをまたいで運転席から助手席に移動するのは簡単なことではないはずなのにな、という点が気になっています。もし仮に「運転席にいなくても動くか試してみよう」と盛り上がったとして、また運転席に戻るつもりで助手席に乗り移るのは面倒ですよね。
先週と今週は日系自動車メーカーの最新ADAS(先進運転支援システム)に試乗する機会があり、ハンズオフをたくさん体験しました。渋滞中のレベル3の自動運転も実践してみました。乗っていてひしひしと感じたのは、ドライバーは今まで以上にクルマの機能や性能を理解しなければならないということです。
使い方が複雑で難解だったわけではありません。どういう機能でどう操作すると作動するのかを教わっていると、手を離していいならちょっとご飯食べよう、目を離していいなら読書でもしよう、という気にはなれませんでした。ドライバーが注意深く安全に運転するのを前提にしているからです。
クラッチ操作の必要なMTが2ペダルになり、重ステがパワステになり、運転操作は随分とハードルが下がりましたが、ハンズオフやアイズオフはスイッチを押せば思考停止で使える機能ではありません。使う前に、「ステアリングから手を離したり、周辺監視から目を離したりできる間に、自分は何をしたいだろうか」と全てのドライバーが考えてみるべきです。テキサス州の事故で乗員が事故の直前に何をしていたかは分かりませんが、全ての人に正しい理解を得て“半自動運転システム”を使ってもらうのは、決して簡単なことではないといえるでしょう。
最後に、今週公開した記事をご紹介します。「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第3回が開かれ、二輪車の販売店が参加する全国オートバイ協同組合連合会などが出席しました(関連記事:燃費が良好な二輪車にも電動化は必要か、日本の電池のサプライチェーンの課題は)。
「既に燃費が十分によい二輪車の排出削減とは?」という問いかけが印象的でした。電動化のコストと性能のバランスが難しいことも改めて認識できました。充電に関しては、バッテリー交換式を採用することが解決策として有望ですが、EVの充電インフラと同じ悩みを抱えないとも限りません。ただ、バッテリーを交換して走るというのは、四輪車のEVではなかなか採用されないアイデアです。二輪車でうまく行くのをぜひ見てみたいところです。
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