自動車の車体を一体成形する技術である「ギガキャスト」ついて解説する本連載。第6回からは前後編に分けて、テスラのギガキャストに関する基本的な考え方とその方向性について見てみる。
前回は、ギガキャストを発案したテスラという会社に着目し、その歴史やクルマの開発状況、工場の展開などを紹介した。今回からは、テスラのギガキャストに関する基本的な考え方とその方向性について見てみる。
さて、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、2020年4月29日の2020年第1四半期決算説明会で、次のように語った。
The current Model Y rear underbody has two high pressures die cast parts plus many small parts.
Later this year, it will become a single-piece casting.
This reduces 70 parts to 1, eliminates welding, reduces robots, reduces capital expenditure, and improves MBH.
日本語に翻訳すると以下のようになるだろう。
現行の「Model Y」のリアアンダーボディー構造は、2つの高圧ダイカスト(HPDC)製の大型鋳造部品と、多数の小型プレス部品や補助部品によって構成されている。
今年後半には、これらを単一の高圧ダイカストによる一体鋳造部品へと統合する予定である。
この変更により、約70点の部品が1点に削減され、溶接工程が不要となり、必要なロボット台数が減少し、設備投資(CAPEX)が削減され、さらに車体1台あたりの工数(MBH)が改善される。
つまり、マスク氏がギガキャストを推進した背景には、単なる大型鋳造機の導入ではなく、「自動車製造そのものを再設計する」という生産技術的な思想があったということである。
従来の自動車メーカー、例えばトヨタ自動車は、以下に挙げるトヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)の考え方に従ってモノづくりをしてきた。
「高品質な部品⇒精密な加工⇒多数部品の最適組立⇒熟練した工程管理⇒高品質な完成車」という「部品品質+組立品質による価値創造」でもって、1933年(昭和8年)9月に豊田喜一郎が豊田自動織機製作所から自動車部門を独立させた時代から長年にわたってクルマづくりの研さんを重ね、現会長の豊田章男氏の提案により「もっといいクルマづくり」が推進、展開されている。
すなわち、「複雑な部品を多数組み合わせ、熟練した工程管理で品質を作り込む」という発想で発展してきた、ように思われる。
一方、マスク氏の発想は「そもそも、なぜ自動車は何百個もの部品を組み立てなければならないのか」という疑問から始まる。これは半導体やコンピュータ産業に近い考え方である。
例えば、スマートフォンは昔の電子機器の「多数の個別部品⇒複雑な配線⇒手作業調整」から、「高度に統合されたチップ⇒少数部品⇒自動大量生産」へ進化した。そしてマスク氏は、スマートフォンづくりと同じように、「クルマを作る工程そのものを、コンピュータや半導体のように単純化/統合化できないか」という考え方でクルマづくりをしようとする発想/思想を強く持っているように思える。
その中心となる考え方に関わるのが次に挙げる3つのワードである。
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