ここからは、注目すべき上記の3つのキーワードである、高圧ダイカスト(HPDC)、設備投資(CAPEX)、車体1台当たりの工数(MBH)について見てみる。
HPDCは、溶融金属を高圧で金型に注入/射出し、一体部品を作る成形技術である。その背景の主たる考え方は、「部品を減らすことが最大の改善」という思想である。
従来の自動車ボディーは、図1に示すように、部品A、部品B、部品C、部品Dを溶接して車体構造を作っていた。大まかなプロセスは以下に挙げる(1)〜(5)で構成される。
また、図2に、テスラがモデルYの前に生産していたEV「モデル3」の車体後部の組み立て工程を示す。
以下に、図2の(1)〜(8)の各工程を簡潔に説明する。
このように、従来工法では多数の部品を1つずつ位置決め/溶接して車体後部を構成するため、工程数、溶接点数、CAPEX、製造時間が大きくなることが特徴である。この課題を解決するため、後にテスラはギガキャストを導入し、数十個の部品を大型アルミ鋳物1点へと置き換える製造方式へ移行した。
つまり、これまでの自動車工場は「たくさんの部品を作る工場」であった。これに対してテスラのギガキャストは、「アルミ溶融⇒高圧注入⇒巨大金型⇒大型一体部品」といったように、コンピュータや半導体の製造のような単純化/統合化を目指している。
テスラは、大型ダイカスト鋳造成形機「ギガプレス」を用いて、車体後部などを大型一体成形する方式を採用した。
本連載の第1回、第3回(特に4ページ目のコラム)、第4回などで述べてきたが、HPDCとは溶融アルミを高圧で金型に射出し、短時間で成形する工法である。テスラのギガプレスでは、FSA(Foundry Star Alliance)のCostamp Group(コスタンプグループ)がこの技術を担う。なお、自動車の大型構造部品に適用するには、極めて大きな射出力と金型剛性が必要である。そして、テスラが導入した6000〜9000トン級のHPDCは、この用途に特化した世界最大級の鋳造機であった。
ここで重要なのは、なぜ部品点数について「70点⇒1点」が可能になるのか、ということである。
繰り返しになるが、70点の部品を用いていたときには以下の工程が必要であった。
これらをギガプレスを用いて「1回の鋳造で置き換える」ことによって、以下のような効果が生まれた。
中でもマスク氏が重視したのが「CAPEX」と「MBH」である。
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