自動車メーカーが8.2秒で伝えるガラスの魅力、「真面目禁止」でJAIDとAGCが協創「8.2秒展」レポート(1/3 ページ)

国内自動車メーカーに所属するカーデザイナーが参画するJAIDとAGCは、デザイナーらによるクリエイティビティと、AGCが保有する先端材料・技術を融合させたアート展「8.2秒展」を開催(会期:2021年3月23日〜6月19日)。100以上のアイデアから厳選した6社7作品をAGCの未来創造スペース「AGC Studio」で展示している。

» 2021年04月19日 13時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

カーデザイナー集団のJAIDとAGCが「8.2秒展」を開催

 「8.2秒の法則」をご存じだろうか。初めて対面した人やモノに心が動く、好きになるまでの時間のことで、男性が恋に落ちるのに必要な時間としても知られている。

 この“8.2秒”をテーマに、国内の主要自動車メーカーに所属するカーデザイナーが参画するJAID(Japan Automotive Interior Designers:ジャイド)とAGCは、デザイナーらによるクリエイティビティと、AGCが保有する先端材料/先端技術を融合させたアート展「8.2秒展」を開催(会期:2021年3月23日〜6月19日)。100以上のアイデアから厳選した6社7作品をAGCの未来創造スペース「AGC Studio」(東京・京橋)で展示している。

AGCの未来創造スペース「AGC Studio」で開催中の「8.2秒展」のエントランス AGCの未来創造スペース「AGC Studio」で開催中の「8.2秒展」のエントランス ※画像提供:AGC [クリックで拡大]

 本稿では、同年4月14日に報道陣向けに開催された「『8.2秒展』プレスデー」の様子を中心にお届けする。ちなみに、「8.2秒展」の会場となるAGC Studioの1階スペースが作品の展示、2階スペースが制作過程を紹介するプロセス展となっている。

2階スペースは各作品の制作過程などを紹介するプロセス展となっている 2階スペースは各作品の制作過程などを紹介するプロセス展となっている ※画像提供:AGC [クリックで拡大]

自動車メーカー6社7作品を展示、ガラスを用いた8.2秒の物語を提案

 JAIDは、ある雑誌の座談会企画をきっかけに2015年に発足した、国内自動車メーカーのインテリアデザイナーやCMF(色、素材、加工)デザイナーが有志メンバーとして参加するクリエイティブ集団で、企業の枠を超えたオープンクリエーションによって「新しい自動車の内装」の創出を目指している。2019年1月には“1kg”の重さの中でどのような価値を創造できるかをテーマにした「1kg展」を開催し、3Dプリンティング技術を活用した作品群を披露している(レポート記事:変わりゆくクルマのインテリア、JAID「1kg展」の3Dプリント作品が示すその先)。

 今回開催された「8.2秒展」には、JAIDに参加するトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、スズキ、ダイハツ工業、いすゞ自動車の6社が、7つのアート作品(トヨタ自動車が2作品、その他は各1作品)を手掛けた。

 JAIDと共同でガラス素材などを用いたアート作品の創出に取り組むAGCは、同社の素材の可能性を探ることを目的に、JAIDとの協創プロジェクトを2019年からスタートさせている。両者は2020年に竣工(しゅんこう)、2021年にフル稼働を開始したAGC横浜テクニカルセンターの新研究棟(横浜市鶴見区)にある社外パートナーとの協創空間「AO(アオ/AGC OPEN SQUARE)」を活用しながら、「8.2秒展」に向けた創作活動を進めてきた(関連記事:AGCが新研究開発棟でオープンイノベーションを加速、JAIDとのコラボも進行中)。

JAID/トヨタ自動車 中嶋孝之氏 JAID/トヨタ自動車 中嶋孝之氏

 「JAIDはライバルメーカー同士の集まりだが、その枠を超えた交流を推進し、参加企業を増やしながらその活動を進めてきた。われわれのモットーは“踊り場”と“お祭り精神”で、『真面目禁止』で活動している。会社や世代を超え、その都度集まったメンバーが踊り場でしっかりと踊り、オープンな創作活動に取り組んでいる。また、オムニバスな形式で、各社、各人の色を大切にしながら本気で楽しいことを追求してきた。今回の『8.2秒展』では、AGCの研究員とともに二人三脚で制作を続けてきた。コロナ禍で本当に大変だったが、その中でも各社、各案で創意工夫しながら何とか展示会に向けて作品を完成させることができた。今回の協創による化学変化を展示を通じてぜひ感じ取ってほしい」(JAID/トヨタ自動車 中嶋孝之氏)

 以降、各社のアート作品について写真や動画を交えながら順番に紹介する。

【1】Footbath:トヨタ自動車(1)

 トヨタ自動車は、現代人にとって最も身近で、毎日長時間触れているものとして、スマートフォンに着目し、スマートフォンと指(人)の接点にあるカバーガラスを用いて“魔法のような体験”ができないかと考え、カバーガラスと水による作品「Footbath」を考案した。AGC製の化学強化カバーガラス「Dragontrail」が90枚(3×30)配置され、その1枚1枚の表面には水が張られており、表面張力によってガラス表面に水が満たされた状態になっている。そして、各ガラスを支える棒(給水機能も有する)が振動スピーカーからの振動を伝え、ガラス表面の水にさざ波のような波紋を作り出し、そこにストロボ照明を当てることで動きや表情のコントラストを生み出す。

トヨタ自動車の作品「Footbath」 トヨタ自動車の作品「Footbath」 [クリックで拡大]
ガラス表面の水にさざ波のような波紋が生じる「Footbath」のプロセス展示 (左)ガラス表面の水にさざ波のような波紋が生じる ※画像提供:AGC/(右)「Footbath」のプロセス展示 [クリックで拡大]

この作品で使われているAGCの技術

化学強化カバーガラス(Dragontrail)、高機能フッ素系コーティング剤(SURECO)、ガラス振動板、親水/撥水制御


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