変わりゆくクルマのインテリア、JAID「1kg展」の3Dプリント作品が示すその先JAID 1kg展 レポート(1/3 ページ)

国内自動車メーカー7社のインテリアデザイナーが参加するJAIDが2019年1月12〜25日にかけて3Dプリント作品の展示会「1kg展」を開催した。CASE時代を迎え、人とクルマの間にあるインタフェースでもあるインテリアは、エクステリア以上に大きく変わろうとしている。1kg展ではどのようなインテリアの未来が示されたのだろうか。

» 2019年03月12日 10時00分 公開

 去る2019年1月12〜25日の期間、新しい試みの展示会が開催された。「1kg展」という名前のその展示会で披露されていた作品は、全て3Dプリンタにより出力されたもの。

 これだけなら、まぁイマドキな展示会の1つかもしれない。新しい試みと表現したのは、この展示会を開催したのがJAID(ジャイド)という団体だったからだ。JAIDは「Japan Automotive Interior Designers」の略称で、国内自動車メーカーのインテリアデザイナーが集まって立ち上げられた団体だ。現在参加しているのは、ダイハツ工業、本田技術研究所、三菱自動車、日産自動車、SUBARU、スズキ、トヨタ自動車の7社。競合する自動車メーカーのデザイナー同士、何かの折に交流する機会はあるが、共同で団体を作り何かをするというのは珍しい。

 中でもカーデザインにおいてはエクステリアデザイナーと比べると、これまでは注目度が低かった感じもあるインテリアデザイナーが、企業の枠組みを超えてオープンクリエイションを行うというのだから、自動車メーカーで仕事をしていた時代のほとんどをインテリアデザイン担当だった筆者には新鮮で、これからどんなことが起きるのかワクワクもする。

 JAIDが発足するきっかけとなったのは雑誌の対談企画だったそうだが、現在、クルマのインテリアデザインが大きく変化していく過渡期にあるというのも無関係ではないだろう。近年のクルマ関連ニュースなどで良く取り上げられる言葉として、これからのクルマを取り巻く変化についてダイムラー(Daimler)が提唱した「CASE」というキーワードがある。これは、外部や相互接続性の「Connected」、自動運転の「Autonomous」、カーシェアリングやサービスに視点を置く「Shared & Services」、電動化の「Electric」の頭文字を取ったものだ。これらの要素は、クルマの開発や販売に関わる者もユーザーである生活者も無関係ではなく、人とクルマの間にあるインタフェースでもあるインテリアは、エクステリア以上に大きく変わろうとしている。今はその過渡期だ。

 前置きが長くなってしまったが、展示会に話を戻すと、JAIDとして外部に成果を公開するのは今回の1kg展が初となるそうだ。参加デザイナーが考えたものを具現化するところでは、3Dデジタル技術での知見や3Dプリンティング企業各社とのつながりなどに強みを持つ原雄司氏がCEOを務めるDiGITAL ARTISANがサポートするという体制で展示作品は制作されている。

 展示会は2つの会場に分かれて開催された。第1会場「GOOD DESIGN Marunouchi」では1kgで何ができるかというテーマに対する最終作品が展示され、第2会場「DiGITAL ARTISANS GYM」ではその制作過程を展示するというの展示会の特徴になるだろう。

 「どんな1kgの価値を創造できるか?」というお題は共通ながら、それぞれのデザイナーが生みだした展示作品は、バラエティに富んだものが並んだ。“1kg”から発想したアイデアがあれば、アイデアを“1kg”に当てはめたものもある。またアイデア自体も、クルマの枠内に収めたもの、クルマから離れたもの、あるいはJAIDという集いに焦点を当てたもの、といった具合に分かれた。以下に、気になった展示作品を紹介していこう。

∞Fluff

 巨大なタンポポの綿毛といった趣の作品だ。「思わず触りたくなる」感覚に注目したとのことで、表現手段として3Dプリンタによる綿毛が選択されている。3Dプリントされた綿毛単体に注目すると、繊細さであったり、形状をコントロールしながら出力するのは困難だろうなぁといったところに目が行ってしまいそうになる。

 これが1kg分(綿毛+芯)のボリュームで見せていることで、「繊細で壊れそう」という触ると危険な雰囲気よりも、「どんな触感なんだろう?」という触れてみたい好奇心の方を強く感じるものになっている。触感は、クルマのインテリアに限らず、人との近くにあるモノでは軽視できない要素だ。微細形状の集合体によるテクスチャも選択肢に入ってくると面白い。

「∞Fluff」の展示制作過程の説明 「∞Fluff」の展示(左)とその制作過程の説明(右)。触ってみたくなる雰囲気の完成作品を構成する「綿毛」を単体で見ると繊細で儚げなものであるがよく分かる。同時に制作の苦労もしのばれる(クリックで拡大)
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