AGCは、AGC横浜テクニカルセンター(YTC)内に建設していた新研究開発棟の完成を発表するともに、同研究棟内に開設した社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ)」を報道陣に公開した。YTCにAGCの研究開発機能を集約するとともに、社内外の協創を推進するスペースを併設することでオープンイノベーションも加速させたい考えだ。
AGCは2020年11月19日、AGC横浜テクニカルセンター(YTC)内(横浜市鶴見区)に建設していた新研究開発棟の完成を発表するともに、同研究棟内に開設した社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ/AGC OPEN SQUARE)」を報道陣に公開した。新研究開発棟の投資金額は200億円。YTCにAGCの研究開発機能を集約するとともに、社内外の協創を推進するスペースを併設することでオープンイノベーションも加速させたい考えだ。
これまでAGCの研究開発機能は、中央研究所(神奈川市神奈川区)が基礎研究と材料技術を、YTCにある先端基盤研究所がプロセス技術や設備を担当する体制をとってきた。今回完成した新研究開発棟に中央研究所の機能が移ることで、YTC内にAGCの研究開発機能が集約される。新研究開発棟の延床面積は約4万5000m2で、先端基盤研究所が入る既存研究棟を含めると約7万m2の規模になる。
中央研究所から新研究開発棟への移転は順次進めている段階で2021年半ばに完了する計画。移転終了後のフルオープンの時点では、YTCに約1500人の人員が集結することになる。
新研究開発棟の最大の特徴になるのが、オープンイノベーションを加速させるAOの開設になるだろう。AGC 代表取締役 兼 専務執行役員CTOの平井良典氏は「AGCは1907年の創業時に板ガラスの国産化に初めて成功した後も、自動車やテレビなどの民生機器、PCやスマートフォンなどのIT機器といったリーディング産業向けにガラスをはじめとする材料を提供してきた。これらの新たな分野に展開を広げる“新事業”が成長をけん引してきた」と語る。
現在のAGCグループの長期経営戦略では、現在既に安定的に収益を生み出している「コア事業」と、成長エンジンとなる高収益の「戦略事業」に分けているが、これらのうち戦略事業が平井氏の言う“新事業”の位置付けになる。戦略事業は、IoT(モノのインターネット)時代の到来や長寿命化などのマクロ環境の変化に対応して、モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの3分野で展開しており、これらは既に売上高2000億円、営業利益300億円の規模にまで拡大している。「これらが今後コア事業となったときの、次なる戦略事業の柱を創出することが研究開発部門の命題である」(平井氏)という。
AGCは1955年に中央研究所を開設して以降、自社での研究開発に注力してきた。平井氏は「しかし、社会の変化は加速しており、自社の研究開発機能だけでそのスピードに対応するのは難しい。自前主義からオープンイノベーションへの移行が必須になる」と強調する。そこで、まずは中央研究所と先端基盤研究所に分かれていた研究開発機能を集約するために建設したのが新研究開発棟になる。さらに、アカデミアや外部パートナー、顧客とともにオープンイノベーションを進めるためのAOを、新研究開発棟と直結する形で開設した。
オープンエリアとなるAOでは年間1000件以上の社外からの来場を想定している。「従来の研究所は全てクローズドエリアだったが、これを変えていく。AOの中に、新研究開発棟から最新の研究成果を持ち込み、それをAOの来場者に見ていただくなどして、そこからイノベーションが生まれることを期待している」(平井氏)という。
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