さて、ここまで読んで「工場のことだから自分には関係ない」と思われた方もいるでしょう。あくまでも「安全」は工場の現場、作業員の話。その考えは間違いです。総合職の方でも、工場見学、立ち合いや棚卸しなどで現場に出ることはあり、非定常であるがゆえにけがのリスクは高くなります。また、工場だけでなく事務所のけがも「労災」です。災害ゼロにすべく勤める一人一人の安全意識を高める必要があります。
実際に実践されている安全活動を紹介します。それは「ポケテナシ」。主にトヨタグループで実施されている活動です。
当たり前のことですが、実際に守られているか、守っていない人がいた時に注意できるのか。みなさんも自分の周りを見回して確かめてみてください。人はどうしても横着したくなります。一見簡単に見えて徹底することはすごく難しいです。また横断歩道ではいったん停止し、左右を指さし呼称した後で通行することも厳守しなくてはいけません。工場ではトラックやフォークリフト、AGVが通行し、接触すれば大事故につながります。急いでいても、必ず立ち止まり左右の確認を実施してから、通行しましょう。
ちなみにこの行動が擦り込まれた結果、「休日に街中の横断歩道でも指さし呼称をしてしまう」が製造業あるあるネタとしてあります。もちろん、安全のためには街中でも実施することが望ましいのですが、他人の目に気がついた時は少し恥ずかしい気分になります。
最後に自動車業界では非常に交通安全に敏感です。自動車を製造する立場として交通事故は起こしてはいけません。通勤中の事故は労働災害にも含まれ、災害ゼロに向けて全員が安全運転をしていく必要があります。そのため会社内では定期的に交通安全のミーティングが開かれ、交通安全啓発の映像を見る教育が実施されます。事故が起きてしまった場合には、事故の内容、要因について報告書を提出し、同様の事故が起こらないよう社内で共有されます。
事故の中でも「飲酒運転」は絶対に起こしてはならない「犯罪」です。そのため自動車業界でクルマでしか行けない工場の飲み会がある場合は、工場から飲み会会場まで専用バスを出す、いったん家にクルマを置いた上で電車を使用する、お酒を飲まない人を決めてクルマで送り迎えをしてもらうなどの手段を駆使して会場に向かいます。平日に飲み会がある時はなかなか大変です。
製造業で働く上で1番重視すべき業務である「安全」。効率やコストに目を奪われがちですが、「安全」を軽視してはいけません。工場に勤める人だけでなく、事務所の方も含めて意識を高めることが未然に事故を防ぐことにつながります。今回の記事を参考に少しでも「安全」の知識を深め、不安全行動がなくなればと思います。
それではみなさん、今日も1日「ご安全に!」
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