東北大学は、アレルギー性皮膚炎の発症制御に脂肪酸結合タンパク質3型が重要な役割を果たしていることを明らかにした。妊娠期の母体における脂質栄養摂取が、子のアレルギー性疾患発症の可能性に関与することが示唆された。
東北大学は2020年11月2日、アレルギー性皮膚炎の発症制御に、脂肪酸結合タンパク質3型(FABP3)が関わっていることを明らかにしたと発表した。FABP3欠損マウスの幼体では、皮膚炎症に関与するリンパ球の分化と皮膚への局在が進み、成体でアレルギー性皮膚炎を発症する一因となることが分かった。同大学大学院医学系研究科 教授の大和田祐二氏らと、慶應義塾大学との共同研究による成果だ。
研究チームはまず、脾臓の免疫細胞でFABP3の遺伝子発現を網羅的に解析し、Tリンパ球の一部にFABP3が発現していることを発見した。次に、FABP3欠損マウスで薬剤誘導によるアレルギー性皮膚炎を誘導した結果、野生型と比べて腫れがひどいこと、炎症因子IL-17を産生するVγ4+γδTリンパ球が集積することを確認した。
FABP3欠損マウスでは、アレルギー性皮膚炎を誘導する前でも、Vγ4+γδTリンパ球の割合が増加していた。そのため、FABP3欠損マウス幼体のγδTリンパ球について調べると、胸腺と皮膚でVγ4+γδTリンパ球の割合が有意に増加していた。
また、幼体マウスのDN2細胞がTリンパ球へ分化する能力を解析。FABP3欠損マウス胸腺由来のDN2細胞は、野生型よりもVγ4+γδTリンパ球への分化が進行していた。
近年、食物からの栄養摂取によって免疫細胞の機能が変化し、アレルギー病態に影響を与える可能性が示されている。FABP3は、長鎖脂肪酸の細胞内輸送に関与するタンパク質だ。今回の研究成果は、妊娠期の母体における脂質栄養摂取が、子の成人期におけるアレルギー性疾患発症の可能性に関与することを示している。
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