京都大学は、皮膚のp38-MAPキナーゼという酵素の活性化が乾癬発症の十分条件であることを突き止めた。また、p38-MAPキナーゼの働きを抑えることが、ステロイドに代わる新たな外用薬の開発につながる可能性を示した。
京都大学は2019年8月2日、p38-MAPキナーゼという酵素の働きを抑えることが、ステロイドに代わる新たな外用薬の開発につながる可能性を示したと発表した。同大学大学院医学研究科 准教授の大日輝記氏らの研究グループによる成果だ。
本研究グループは、マウスの皮膚にp38-MAPキナーゼを活性化させる薬品を塗るだけで、乾癬に似た症状を発症することを発見。皮膚のp38-MAPキナーゼの活性化が発症の十分条件であることを突き止めた。さらに、乾癬の患者から病変部の皮膚を一部とってp38-MAPキナーゼの阻害薬を作用させると、皮膚組織での炎症性物質の産生が抑えられることも発見した。
実験では、皮膚の表面を覆う細胞である表皮細胞の中のTRAF6という物質によって活性化される細胞内の物質を調べ、p38-MAPキナーゼに注目した。p38-MAPキナーゼは細胞の中にある酵素で、乾癬の病変部の表皮細胞で活性化し、外からの刺激や加齢によって皮膚で活性化しやすくなることが知られている。
マウスの耳にアニソマイシンというp38-MAPキナーゼの活性化薬を1日1回塗布し、5日後までに、乾癬に似た症状を実験的に生じさせた。そこにp38-MAPキナーゼの阻害薬を併用して塗ると、乾癬を発症しなかった。さらに、乾癬の患者の病変部の皮膚組織でp38-MAPキナーゼの阻害薬を作用させると、炎症性物質の産生が抑えられた。
以上の研究結果から、皮膚での特定の酵素の活性化が特徴的な皮膚炎を発症させること、また、p38-MAPキナーゼがステロイドに代わる新たな外用薬開発の標的となる可能性があることが分かった。
今後、p38-MAPキナーゼ阻害剤を外用薬とするため、乾癬以外の皮膚疾患も対象視野に入れ、課題の克服および外用薬の最適化の可能性について研究開発を進めていくとしている。
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