慶應義塾大学は、生体内多機能物質ラクトフェリンによる、新たな炎症制御メカニズムを解明した。ラクトフェリンが過剰な自然免疫反応を抑制し、炎症を制御する可能性を示した。
慶應義塾大学は2016年8月1日、生体内多機能物質ラクトフェリンによる、新たな炎症制御メカニズムを解明したと発表した。同大学医学部の平橋淳一専任講師らの研究グループが、東京大学大学院薬学系研究科の浦野泰照教授、ハーバード大学などと共同で行ったもので、成果は同年7月14日に「EBioMedicine」オンライン版に掲載された。
炎症とは、生体が内外から有害な刺激を受けた際に起こす反応で、感染症や自己免疫疾患、血栓症、動脈硬化など、さまざまな疾患に関わっている。一方、免疫には、先天的に備わる自然免疫と後天的な獲得免疫があり、炎症と免疫は密接に連携して生体を守っている。
今回、同研究グループは、炎症と自然免疫との関係に着目。生体内の多機能性タンパクであるラクトフェリンが過剰な自然免疫反応を抑制し、炎症を制御する可能性を示した。
炎症性疾患の治療には、これまで主にステロイドや免疫抑制薬などの薬剤が用いられてきた。しかし、その副作用による有害事象が大きな課題となっている。同研究グループでは、今回の成果により、副作用の少ない炎症性疾患治療薬の開発への糸口を見つけたとしている。
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