慶應義塾大学は、がんに有効な治療薬「オプジーボ」を原因として発症する重症筋無力症の特徴を明らかにした。重症筋無力症を副作用として発症する頻度は低いが、薬によらない重症筋無力症と比べて、重篤になる確率が高いことが分かった。
慶應義塾大学は2017年8月21日、がんに有効な治療薬「オプジーボ」を原因として発症する重症筋無力症の特徴を明らかにしたと発表した。同大学 医学部 専任講師の鈴木重明氏を中心とした、全国の病院・研究機関など14施設の共同研究によるもので、成果は同月18日に米神経学会誌「Neurology」に掲載された。
研究グループは、2014年9月〜2016年8月の日本でのオプジーボ販売後の副作用報告を独自に解析。その結果、オプジーボを投与された9869人のがん患者の中で、12人(0.12%)が重症筋無力症を発症していることが分かった。このうち9人はオプジーボ投与開始直後、1回目あるいは2回目の点滴投与後に発症していた。症状は急速に進行し、薬と関係なく発症した重症筋無力症に比べて症状が重い場合が多く、9人のうち6人が呼吸ができなくなるクリーゼになった。
薬によらない重症筋無力症の場合と同様、重篤化を防ぐためにはステロイドや免疫グロブリンによる治療が有効だ。しかしクリーゼになると、人工呼吸器の装着が必要になるため、入院が長期間になる。なお、今回のオプジーボ投与による重症筋無力症の調査では12例中2例の死亡例があった。
オプジーボによる重症筋無力症を早期に診断し、治療することで重篤化を防ぐことができる。今後、オプジーボによる治療を開始する際に、重症筋無力症の発症を予測できる検査の開発が望まれる。
オプジーボは多くのがんに有効な薬として広く用いられているが、従来の抗がん剤にはない副作用も報告されている。重症筋無力症もオプジーボの副作用として知られているが、詳細は不明だった。
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