MONOist 日立製作所との協業のきっかけはどういうものだったのでしょうか。
プーミー氏 工場のプロセスにおけるベンチマークテストを行った際に、グローバルリーダーとなる企業に対し、最も大きなギャップがあったのがエネルギーマネジメントに関しての取り組みである。エネルギーを効率的に活用し、再生可能エネルギーなど持続可能なエネルギー活用の比率を高める取り組みについて、グローバル基準と差があるということが分かった。これらのギャップを埋めるために考えたのが、IoTやAIなどのデジタル技術を活用することだ。これらのデジタル技術を活用することで、エネルギー領域における抜本的な改善や全体最適化ができないかと考えた。
ちょうどその頃、日立製作所が取り組んでいるIoTプラットフォーム「Lumada」や、これらを活用した取り組みを、日本の工場見学などを通じて実際に見て触れる機会があった。もともと日立製作所との関係もあったことから、協業して取り組みを進めていくことを決めた。
具体的には、タイ南部のトゥンソンにあるセメント工場で「Lumada」の「工場シミュレーター」を活用し、生産情報やエネルギー情報の最適管理を行うようにした。SCG-CBMでは14のソーラーファームや、ガスコージェネレーションシステムなどさまざまなエネルギーシステムを運用しているが、これらを最適な形で運用し、パイロットプロジェクトでは成果につなげることができた。今後はさらに全工場に展開し、エネルギーマネジメントにおける効果検証を進めている段階である。
MONOist 工場のエネルギーマネジメントを中心とした取り組みの他に、物流でもデジタル技術を活用した取り組みを進めています。
プーミー氏 物流の最適化に向けては、セメント配送用のトラックの運行データを分析し、これらの位置情報などを活用することにより、最適で効率的な配送計画を立案できるようにする。これにより、物流コストや在庫の削減に取り組んでいる。試験的なプロジェクトでは成果が出ているが、1年間をかけて検証していく計画である。
物流の最適化などを考える場合、工場側のデータ連携なども考えられるが、現状ではこれらのシステムは個別で活用している状況である。一方で、CPACなど顧客からの受注の領域では、それぞれの相互でのデータ活用を進めており、顧客情報などを分析することで、注文に対してより短い期間で最適に製品を配送できる仕組み作りに取り組んでいる。
現在は、セメント配送用トラックの運行情報はバンコクのセンターで一元的に管理している状況だが、中央一極集中では効率的ではない面もあるので、今後は地域で分けて地域ごとに配送を最適化する形を検討している。
MONOist 今後の方向性をどう考えていますか。
プーミー氏 目指しているのは企業活動の全ての情報を一元的に把握できる情報基盤「Future Industry 4.0プラットフォーム」を構築していくこと。1つのプラットフォームで全企業活動の情報が把握できるようになれば、マネジメント会議なども削減できるようになり、企業の各部署が従来以上に自律的に活動できるようになる。経営の役割がなくなっていくような組織が理想だ。これらの実現に向けて、それぞれの成果を検証しながら、企業としての取り組みのさまざまな領域で着実にデジタル化を進めていく。
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