IoTによるビジネス変革が進む中、高い総合力を生かし新たなチャンスをつかもうとしているのが日立製作所である。同社のIoTへの取り組みと現状について、日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部長の阿部淳氏に話を聞いた。
日立製作所(以下、日立)は、自社が保有するIT(Information Technology、情報技術)とOT(Operational Technology、制御技術)のノウハウを融合し、新たなIoT(モノのインターネット)基盤として「Lumada」を2016年5月から展開している。それに先立って顧客別の12のフロントビジネスユニット(BU)を組織するとともに、これらの基盤とするITとOTを統合的に見るサービス&プラットフォームBUを設置。総合力を強みに、第4次産業革命ともいわれるビジネス革新に取り組んでいる。
IoTにおける日立の強みはどこにあるのか、サービス&プラットフォームBUで、OTを担当する日立製作所 サービス&プラットフォームBU 制御プラットフォーム統括本部長の阿部淳氏に話を聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist インダストリー4.0をはじめ、世界各国におけるIoTによる製造業革新の動きが加速しています。その中で日立も組織体制を含めて大きな変化を進めていますが、現状の動きについて教えてください。
阿部氏 日立は長くモノづくりを中心としてきた企業だ。しかし、時代の流れが大きく変化してきた。モノづくりは当然重要だが、それだけではニーズを満たすには不十分で、さまざまな課題に対して「これらを解決するシステム」を提供するということが求められるようになった。
この課題は業種や業界、それぞれの置かれている立場で大きく異なる。そのため、日立製作所では2016年4月から、12の業種別のユーザーに対する専門のフロント組織を設置し、より詳細なユーザーの課題をくみ取れる体制を構築した。そして、これらの基盤として従来ITを扱っていた部門と、OTを扱っていた部門を併せ、全ての技術的基盤を構築するサービス&プラットフォームBUを設置した。私はもともとIT部門のソフトウエア畑が長いが、OTを担当する制御プラットフォーム統括本部の担当となり、両方を融合する役割を担っている。新体制での活動を進めてきたが順調に浸透してきていると手応えを感じている。
MONOist IoTの領域では「日本は遅れている」との指摘も最近多く出ていますが、進捗状況についてはどのように捉えていますか。
阿部氏 最近の報道や外資企業の発言を見ていると「日本VS欧米」でさらに、「日本が遅れている」とする話が多いが、個人的にはその発想そのものに違和感を持っている。日本と欧米のアプローチに「違い」があることは事実だが、領域によっては日本がはるかに進んでいるところもある。例えば、鉄道がある。
日立は鉄道車両および運行管理システムそのもので多くの納入実績があるが、運行管理システムの信頼性や複雑なダイヤにおける高精度な制御などは、世界的に見ても最先端だといえる※)。自律分散システムなど優れた技術も保有しており、日本企業が必ずしも「システム」に弱いというわけではない。
制御プラットフォーム統括本部の中心事業所は、茨城県日立市の大みか事業所になる。ここでは、電力や鉄道、鉄鋼、上下水道などの重要インフラにおける制御システムなどを提供しているが、信頼性も含めて、OTの力は、世界的に見て劣っているとは思っていない。
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