IoTを活用し産業を革新する第4次産業革命が大きな注目を集めている。しかし課題となっているのがシステムの複雑さや異種システム環境との連携だといえる。こうした複雑なシステムを実現している世界がある。鉄道だ。北陸新幹線延伸を推進するJR東日本に、システム構築の取り組みについて話を聞いた。
IoT(モノのインターネット)が産業を革新する第4次産業革命が大きな注目を集めている。しかし、スマートファクトリーやスマートシティーなど、現実的にはIT(情報技術)やOT(制御技術)が複雑に組み合わさるシステム構築は容易なものではない。特にリアルタイム性が要求されるようなシステムであればなおさらである。
ただ、こうした複雑なシステムを実現している環境は既に存在している。鉄道である。2015年3月に金沢まで開通した北陸新幹線は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の新幹線として初めて、他社である西日本旅客鉄道(JR西日本)との2社間での共同運行を実現。それぞれの異種システム環境やオペレーションをすり合わせるのにさまざまな工夫をこらしたとしている。同システム開発に携わったJR東日本 鉄道事業本部 電気ネットワーク部 課長 COSMOS技術管理・開発プロジェクト グループリーダー 恩田義行氏に話を聞いた。
北陸新幹線の金沢延伸は、新幹線の歴史の中でもエポックメイキングなものである。1つは240kmにも及ぶ大規模な延伸だったという点、そしてもう1つが同一路線を複数の鉄道会社により共同で運営される初めての新幹線という点である。
新幹線は国策として延伸が進められているが、北陸新幹線はもともと高崎駅と長野駅間が1997年に開通。当時は通称「長野新幹線」としていたが、長野駅から金沢駅間が開通し正式名称の「北陸新幹線」を用いることとした。延伸により高崎駅から上越妙高駅間はJR東日本が、上越妙高駅から金沢駅がJR西日本の管轄により運行されるようになった。
ちなみに2017年は国鉄が分割民営化され、JR各社が誕生してから30周年となる節目の年である。国鉄時代は、同じシステムや同じ運営手法が取られてきたが、別会社となって30年が経過する中、お互いのシステムや運営手法にはそれぞれの違いが生まれてきている。
恩田氏は「30年間の間にそれぞれに最適な運営手法が生まれてきた。また各鉄道会社によって得意な点や不得意な点なども生まれてきている。JR東日本でいえば複数の新幹線の共同運行や在来線との混在など、条件の異なる運行の一元的な制御という点ではノウハウがある」と述べている。
こうした複数の企業間のオペレーション面の連携や、システム面での連携はどのように構築したのだろうか。恩田氏は「主に3つのポイントがあった」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.