MONOist IoTによる産業構造の変化は第4次産業革命とも呼ばれています。OTの力が強みとしてあるとして、どういう変化があると考えますか。
阿部氏 IoTやデジタル革新などの動きは技術的には大きな進化だが、ユーザー企業にとってはこれらは単なる手段であって、目的ではない。IoTだけにこだわるような個別的な技術論は意味がない。最も重要なのは「目的」の部分で、具体的にはこれが「企業の抱える課題の解決」だと考えている。その考え方に立つとOTにしてもITにしても従来は個別最適な提案だった。これを全体最適の形で解決するようにしなければならない。この目的と手段を履き違えるケースが多いと感じている。
日立では、IoTの展開における強みとして「OT×IT×プロダクト・システム」を挙げている。ITとOT、そしてデータを取得する製品システムまでを保有していることを強みとする戦略である。確かに、グローバルでの競合企業などを見渡してみても、これらの全ての要素を高度な技術レベルで抱えている企業はほとんどなく、独自の強みが発揮できる。
新体制におけるITとOTの融合については、もっと加速度を上げていきたい。よく話しているのが、ITは出された問題を解くのは得意だが、問題を作ることができないということだ。問題そのものはOTの領域つまり「現場」から生まれてくる。ここを有機的に融合することが、大きなテーマとなっている。
MONOist IoT基盤「Lumada」の手応えは?
阿部氏 順調だといえる。2016年5月に発表した「Lumada」は、データの統合、シミュレーションなどのソフトウェア技術などで構成される汎用性の高いIoTプラットフォームである。2016年10月にはプロトタイピングや仮説検証などを行える「Lumadaコンピテンシーセンター」を設立。問い合わせや検証は順調に増えており、商談自体も多く実施している。
「Lumada」は日立グループにおける事業でのIoT実践を通じたノウハウを「テンプレート(サンプルとなる標準的な枠組み)化」して提供していることが特徴だ。それぞれのテンプレートに応じて、最適な形でデータ共有の仕組みや人工知能機能、シミュレーション機能、データレイクなどを組み合わせた「ソリューションコア」を用意している。
ユーザーの課題解決を目的としその都度システムを設計していればどうしても膨大な時間がかかる。核となる技術の組み合わせや、業種ごとに合わせた標準テンプレートのようなものを用意することで、実装に抱える時間を大きく短縮でき、ユーザーに価値をより早く提供できるようになる。これらは日立グループ内で実際に成果が得られたものであるため、実践的であることが特徴だ。
日立グループは良くも悪くも巨大で多様な事業の複合体であり、グループ内では多種多様な業界に向けた事業が行われている。こうしたさまざまな業種や業界で実際に使用して成果が出たものを導入すれば、迷わず早くに効果が出るため、日立に声がかかっているのではないかと考えている。
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