「HomeX」を作り上げる中で重視したポイントが「シンプル」「ファスト」「イージー」の3つである。これを実現する上で製品を形にする上で「取り除いた」5つの点が以下である。
馬場氏は「各事業部からプロジェクトに参加してもらい、共通のデザインポリシーを作って実現した。エアコンやドアホン、給湯器などがオムニチャネルで統一された接点で触れ合うことができるようになる」と述べている。
もう1つのポイントが「アップデートできる」ということだ。パナソニックは100周年に際し、家電の会社から「暮らしアップデート企業」になると表明している※)が、「HomeX」はまさに暮らしをアップデートしていく基盤となる。
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馬場氏は「従来の売り切り製品は買った瞬間から価値が下がっていくものだった。しかし、ずっと製品を通じて顧客とつながっていくことで、毎日の暮らしをアップデートし続け、個人に寄り添って価値を高めていくことができる。既にスマートフォンやテスラの電気自動車などでは実現できている世界を家で行えるようにする」とアップデートの価値について述べている。
これらを実現するにはさまざまな技術が必要だが、馬場氏は「技術の詳細を語りたくはない。つながる、つながらないは重要ではなく、やって当たり前のものになっている。HomeXで伝えたい価値観は、今あるものがつながることを前提とし、それにより何がどう変わるのかということだ」と目指す姿の重要性を語る。
一方で「自前主義でのガラパゴス化はやってはいけないこと」(馬場氏)とし、既に社外に30社以上のパートナーと協業している他、パナソニック社内での複数事業部での連携も進めているという。さらにシステム間の連携を実現するAPI( Application Programming Interface)も200以上用意しており、IEEEやW3Cなどへの標準化活動にも取り組んでいるという。
さて暮らしの情報基盤として展開を開始した「HomeX」だが、その目指すところはどこにあるのだろうか。馬場氏は「目指すところは暮らしに『セレンディピティ』を量産できる点だ」と語る。セレンディピティとは「求めて得たわけではない発見」「喜ばしい驚き」を指す。
これを実現するためには、暮らしのさまざまな動きをトリガーとする「暮らしのモーメント」と情報基盤が直結している必要がある。「暮らしの中での多くのことは問題が問題として認識されていない。情報基盤が人に寄り添い、暮らしを見つめ、人々の生活におけるそれぞれの瞬間に最適な提案を行うことで、課題を意識しなくてもより良い暮らしを実現できるようになる。そうした世界を目指したい」と馬場氏は目指す方向性について述べている。
さらに馬場氏はパナソニック創業者の松下幸之助氏の言葉を引用し「『売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永久の客を作る。』というこの言葉そのものが『HomeX』の基本的な考えだ」と語っていた。
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