そして「これが実現できるのは世界にパナソニックしかない」と馬場氏は強調する。それは現在、パナソニックの家電製品を使うアクティブユーザーが膨大な数で存在するからだ。「パナソニック(の製品やサービス)を通じて部屋を涼しくしている人が毎日1億人、空気をきれいにする人が毎日1億人弱、明かりをつける人はさらに膨大な数がいる。パナソニック製品は毎日10億人のユニークユーザーが何らかの形で使っている。ユーザーが意識していない領域のものもあるかもしれないが、10億人のホームエクスペリエンスを支援しているのだ」と馬場氏は強調する。
この膨大なユーザーとの接点を生かして“暮らし”をスマート化していこうというのが、「HomeX」の目指す姿である。
「電話がスマートフォンに生まれ変わり、自動車が今コネクテッドカーに生まれ変わろうとしている。その中で家や暮らしは取り残されている。これを大きく変えていかなければならない。個別の家電の最適化にとらわれたIoT家電とは異なり、暮らし全体を捉えて、住環境そのものをかしこくしていく必要がある」と馬場氏は述べる。
この“暮らし全体のスマート化”の中でパナソニックが重視しているのが「人間中心」であることだ。「IoT家電などが個別でかしこくなったとしてもユーザーにとっては役に立たない。例えば、リモコンや壁面のディスプレイ、テレビのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)など、それぞれの操作などは一貫性がない。本来であれば、ユーザーを中心に同じ使い勝手が実現できているべきだ。家電の世界は1億人が『なぜできていないのか』と思うことができていない世界だった。これらのしっかり向き合うべきときが来たと感じている」と馬場氏は暮らしを取り巻く環境で見過ごされてきた点を指摘する。
そこで「HomeX」では「くらしの中のテクノロジー体系を再構築し、ホームエクスペリエンスをより人間的にする」ことを目指す。例として挙げたのが「目覚まし」である。従来の「目覚まし」は目覚まし時計により行われてきた。目覚まし時計の基本的な役割は「決められた時間に音を鳴らす」ということである。役割としては必要だが「目覚まし時計を好きな人は誰もいないだろう」(馬場氏)。これを人間中心に「人間的に目を覚まし、豊かな1日をスタートする」と再定義し、再設計した場合、目覚まし時計の形や在り方なども大きく変わってくる。
「空気や照明、光、音楽など、目覚めのテクノロジーを総合的に活用することで、自然に気持ちよく目覚められるようにできるかもしれない。入眠をよくするようなテクノロジーも組み合わせる必要もあるかもしれない。こうした1つ1つの要素をそれぞれバラバラに取り上げるのではなく、横でつないでソリューションとして提供できるようにする。こうしたことが実現できる基盤として作るのが『HomeX』である」と馬場氏は述べている。
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