「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

CASEはMaaSではない、MaaS実現のための5つの要件和田憲一郎の電動化新時代!(30)(3/3 ページ)

» 2018年11月05日 06時00分 公開
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MaaS実現のための要件4「都市交通、都市計画の長期プランが必要」

 モビリティサービスの向上を図ろうとすると、おのずから交通手段の最適化が求められるのではないだろうか。その実現のためには、最終的に都市交通や都市計画の見直しに通じるだろう。今回のITS世界会議でも、多くの国や市の都市交通関係の方々が参加していたが、これは単にモビリティにとどまらないことを理解してのことだろう。

 実際にフィンランドでは、できる限り自動車を使わずに、どうやって移動の利便性を向上させるかに苦心している。北欧ではトラムや自転車が好まれており、この使用頻度を上げながら、人々の移動に対する効率化、ストレスフリーを実現できるか検討している。将来を考えると、地域にあった都市交通の最適化、また道路と街の在り方など、都市計画の長期プランを最初に考え、それからどうやってMaaSに落とし込んでいくのか、逆算して現在の打ち手を考えていくことも大切になると思われる。

図表6:MaaSは都市交通、都市計画の長期プランが必要(クリックして拡大) 出典:日本電動化研究所

MaaS実現のための要件5「自動車メーカーは立ち位置変化に対応」

 MaaSが進展すると、自動車メーカーの立ち位置が変わることが想定される。現在は、自動車メーカーは販売会社を通じて、クルマをエンドユーザーに提供している。しかし、MaaSが進むと、モビリティのエンドユーザーは、MaaSプラットフォーマーを通じて、カーシェアやライドシェアを活用することとなる。

 この場合、どのクルマを使用するかは、配車リストの中から選択することになり、その中に自社の製品がなければ選ばれない。自動車メーカーは、MaaSプラットフォーマー、カーシェア、ライドシェア企業への車両供給が求められる。

 最終的には、ライドシェア企業等は、自社のサービスに必要な仕様を自動車メーカーに提示し、それに合致した車両を開発するよう依頼するだろう。既に中国の滴滴出行は専用車両の開発を掲げている。つまり、クルマの選択権が、これまでのクルマのエンドユーザーから、MaaSプラットフォーマー、カーシェア、ライドシェアのMaaS側に動くことが予想される。

 これは自動車メーカーにとって、ビジネスモデルがB2CからB2Bに変化し、次第にクルマのエンドユーザーとの接点を失うことを意味する。地域によっても異なるが、フィンランドのようにできる限りクルマを使用しない方針であれば、なおさら自動車メーカーのポジションは低くなるのではないだろうか。今後どのような立ち位置でMaaSへの取り組みを進めるか、自動車メーカーにとっては悩みどころだろう。

図表7:自動車メーカーは立ち位置変化に対応(クリックして拡大) 出典:日本電動化研究所

 上記に示したように、MaaS実現のためには、幾つかの要件が必要と考え、5つにまとめた。人によっては内容や分類方法などが異なるだろう。また、この方法を必ずしも全て踏襲する必要はないが、試行錯誤しながらMaaSを生み出し、軌道に乗り始めた地域も出ている。このムーブメントは欧州のみならず、米国、アジア地域でも拡大が予想される。

 日本も2018年がMaaS元年となり、行政や複数の企業も検討を開始している。そのため、有効な要件は活用し、また日本ならではのアイデアも加えて、新しいモビリティのサービス化が実用化できればと願う次第である。

筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。


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