ジェイテクトは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」において、ギアとベアリングを一体化した軸受一体歯車「JIGB」の開発品を披露した。
ジェイテクトは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において、ギアとベアリングを一体化した軸受一体歯車「JIGB(JTEKT Integrated Gear Bearing)」の開発品を披露した。
自動車や工作機械などの代表的な機械部品として利用されているのがギアとベアリングだ。ただし、歯車をかみ合わせて力を伝達するギアと、転動体であるころによって摩擦を軽減することで滑らかな回転運動を可能にするベアリングは、機械部品としての要求事項が異なっている。ギアは表面起点破壊強度と歯先靭性、ベアリングは内部起点剥離寿命、耐圧痕性、表面起点剥離寿命が求められる。
ジェイテクト 領域長 BR歯車推進部 部長の牧泰希氏は「これまでギアとベアリングは、それぞれ別々の機械部品として最適化されて性能向上を突き詰めてきたが、限界に近づきつつある。そこで、ギアとベアリングを一体化することで、機械部品として新たに進化できるのではないかと考え、2021年から開発を進めてきたのがJIGBだ」と語る。
今回披露したJIGBの開発品は内輪一体と外輪一体の2タイプとなる。内輪一体タイプは、平行軸タイプの減速ユニットの1軸目シャフトに採用した事例で、ギアシャフトの外径に軸受軌道を追加してベアリングと一体化した。これにより、ベアリングの内輪(軌道輪)が省略されることで、ベアリング外径を10%、軸受トルク損失を30%削減できる。また、減速ユニットのシャフトの1軸目と2軸目の軸間距離を近づけられるので、減速ユニットの小型化も可能になる。
外輪一体タイプは、遊星タイプの減速ユニットに用いられる遊星ギアに適用した事例で、ギアの内径をベアリングの外輪とすることにより幅公差を縮小できる。幅公差の縮小は、シャフト方向への遊び(ガタ)の抑制につながり、ギアの傾きも低減できる。最終的には、遊星ギアの外径を10%削減するという成果が得られている。
牧氏は「ジェイテクトはベアリングを展開するとともに、ギア加工で広く用いられるスカイビング加工機を手掛けており、ギアを用いて開発する自動車向けパワーステアリングも高シェアだ。ギアとベアリングの双方で高い技術と知見、ノウハウがあるからこそ、ギアとベアリングを一体化するJIGBを開発できたと考えている。また、ジェイテクトグループは、製品と製造設備に関する要素技術や知見であるコンピタンスを一堂に集約したコアコンピタンスプラットフォーム(ココプラ)の活用を進めているが、JIGBはその代表例といえるだろう」と強調する。
なお、JIGBは自動車メーカーへの開発提案も進めている。「2030年より少し早いタイミングでの量産車への採用を目標に開発を加速したい」(牧氏)という。
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