MaaSは、公共交通機関、バス、タクシー、カーシェアなどをシームレスにつなぎ、予約と決済ができるモビリティのサービス化を目指している。しかし、そこにはおのずから地域の交通手段の特色が現れる。
フィンランドの首都ヘルシンキは、市街中心部を走るトラムが多くの人に利用されている。さらに、通勤に自転車を利用する人も桁違いに多く、自動車とは分離した自転車と人の専用道路、自転車シェアも数多く見られる。このような中でMaaSを活用しようとすれば、トラムと自転車の存在感が大きくなる。なぜ、Whimアプリの中で、メニューとして自転車シェアを掲載し、「Whim Unlimited」で自転車シェアを乗り放題にしたのかも納得できる。このように、MaaSのメニュー化にあたっては、地域に適した交通手段を大切にすることが必須だろう。
日本でMaaSの話をすると、自動運転車やオンデマンドサービスとの連携を問われる。しかし、冒頭でも説明したように、MaaSは各種交通機関をシームレスにつなぎ、予約と決済ができるようにするサービスだ。実際にフィンランドでは現有の交通機関を活用してMaaSを運営している。ということは、現在の日本でも行おうとすれば可能であり、必ずしも未来の自動運転車や新しいオンデマンドサービスが必須というわけではない。
また、より安全に、より確実に、より早くとユーザーのニーズを考えた時、自動運転車に乗れば到達時間が早いかと言えば、必ずしもそうではないだろう。第25回ITS世界会議でも、スイス郵便の子会社が運営する、運転手のいないレベル4の小型自動運転バスがデモンストレーションを実施していたが、地図を記憶しているとはいえ、周りの状況把握に慎重で、歩くのと同じスピードだった。自動運転車の専用道路ではそうでもないかもしれないが、車両やバイク、自転車、人が混在する現在の道路では、将来もかなり苦労するのではないだろうか。
そう考えると、現有の交通機関を活用してMaaSの経験を積み、将来に自動運転車などが出現した場合に、バージョンアップを図るという戦略が良いように思える。欧州では最近バスレーンが拡充されているようだ。これは次ページの「要件4」にも通じるが、自動運転車はさまざまな種類の乗り物が行き交う汎用道路が苦手で、専用道路に向いていることから、まず現在のバスレーンを拡充し、その後にバスを自動運転化し、最終的にはバスレーンに自動運転車を走らせることができれば良いと考えているとのこと。一見、あれっと思うが、長期的視野で考えているのだろう。
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