MaaSの発祥地であるフィンランドを訪れ、政府や関連企業にインタビューを敢行した。さらに、デンマークのコペンハーゲンで開催された第25回ITS世界会議にも参加して、MaaSとは何かを突き止めようとした。このコラムは、現時点では漠然としたMaaSという概念に対して、筆者なりに足で稼ぎ、要件としてまとめたものである。
Daimler(ダイムラー)のCEOであるDieter Zetsche(ディーター・ツェッチェ)氏が提唱したCASEの概念、つまりC(Connected)、A(Autonomous)、S(Shared)、E(Electric)が将来の進むべき方向を示唆すると受け止め、日系自動車メーカーも含め多くの企業がこれに沿って動いてきた。はやり言葉となって、将来の自動車像と言えば、CASEだと唱える人も多い。
しかし、約3年前から、自動車にとらわれることなく、公共交通機関、バス、タクシー、カーシェアなどをシームレスにつなぎ、予約と決済ができるモビリティのサービス化、いわゆるMaaS(Mobility as a Service)がフィンランドを中心に欧州で発展してきた。MaaSは日本でも話題となっているが、多くの人はMaaSと言ってもいまひとつピント来ず、一体何が起ころうとしているのか分かりにくい。
そのため、筆者は、MaaSの発祥地であるフィンランドを訪れ、政府や関連企業にインタビューを敢行した。さらに、デンマークのコペンハーゲンで開催された第25回ITS世界会議にも参加して、MaaSとは何かを突き止めようとした。このコラムは、現時点では漠然としたMaaSという概念に対して、筆者なりに足で稼ぎ、要件としてまとめたものである。
最初に、目からうろこというか、第25回ITS世界会議でのセッションに参加して、あっと思ったことがある。ある米国の発表者が次のように説いた。世の中にはMaaSと、自動運転車、ライドシェア、オンデマンドサービスなどをごっちゃにする人がいるが、MaaSは「さまざまな形態の輸送サービスを、アクセス可能な単一のモビリティサービスに統合したもの」であり、他のものと区別する必要があるというのだ。多くの参加者がそれに賛同を示しており、欧州の団体「European MaaS Alliance」でも同様の定義をしていた。MaaSは自動車メーカーが提唱するCASEと一線を画するものであることが分かる。
それでは、MaaSとは一体何だろうか。これを探求するため、フィンランド運輸通信省、MaaSを初めて民間企業として開発し、アプリ「Whim(ウィム)」を導入したMaaS Global、MaaSプロバイダーにOS(基本ソフト)を提供するKyyti(キューティ)などのベンチャー企業への取材、また第25回ITS世界会議への参加により、MaaSの全体像をさぐった。
筆者がつかんだ感触として、MaaSはやみくもに進めるものではなく、幾つかの“要件”が必要であると感じた。今回はそれを5つに集約してまとめた。
なぜフィンランドでモビリティのサービス化であるMaaSが生まれたのだろうか。その原点をたどるために、MaaSの発案者でもあるフィンランド運輸通信省を訪ねた。意見交換した結果、フィンランドでMaaSが生まれた理由は3つに分類できると思われる。
これらのグランドデザインを柱に、その後の実現は民間に任せている。2016年に民間企業MaaS Globalが起業し、MaaS初のアプリとなるWhim(ウィム)を提供してフィンランドでサービスを開始した。MaaS Globalは2018年にロンドンでも運営を開始している。
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