　ウーブン･バイ･トヨタは2025年5月21日、トヨタ自動車が同日発表した「RAV4」の新モデルの開発に、ソフトウェア開発プラットフォーム「Arene（アリーン）」が初採用されたと発表した。新型RAV4は、ソフトウェア開発にAreneを採用した最初の車両で、トヨタ自動車はAreneの採用を通じてSDV（ソフトウェアデファインドビークル）の開発を本格化する。

トヨタ自動車のサイモン・ハンフリーズ氏［クリックで拡大］出所：トヨタ自動車

　トヨタ自動車取締役・執行役員 Chief Branding Officer デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏は「SDVへの挑戦がRAV4から始まる。SDVと聞いてエンターテインメントを想像するのは間違いだ。SDVの目的は『悲しい交通事故をゼロにすること』というのがアキオさん（＝豊田章男氏、トヨタ自動車会長）の答えだ。Toyota Safety Senseはビッグデータの活用で安全運転をより一層サポートする。安全性が高まるからこそエンターテインメントの可能性が広がる。安全とエンターテインメントは両輪の関係だ。AI音声エージェントを備えたマルチメディアシステムはデジタルカスタマイズのキャンバスになっていく」とコメントしている。

新型RAV4の外観。写真は3つあるグレードの内の「CORE」［クリックで拡大］出所：トヨタ自動車

Areneは新型RAV4の開発でどう使われた？

　新型RAV4は、ソフトウェア開発キット「Arene SDK」を活用してマルチメディアシステムの音声対話サービスやセンターディスプレイ、予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense（トヨタセーフティセンス）」を開発した。マルチメディアシステムはホーム画面がカスタマイズ可能で、ユーザー一人一人に合わせて操作性を高める。音声対話サービスは音声認識の応答速度や理解の精度を向上させ、快適な対話を実現する。

新型RAV4のマルチメディアシステム［クリックで拡大］出所：トヨタ自動車

　Arene SDKはソフトウェアの構成部品をモジュール化し、ソフトウェア開発を加速させる土台となる。これまではハードウェアとソフトウェアが複雑に相互依存しており、機能は車種ごとの開発だった。Arene SDKはハードウェアとソフトウェアを切り離し、設計やコーディング、評価、展開、保守運用までの一連のソフトウェア開発のライフサイクル基盤を共通化しており、同一のアプリケーションを複数車種に展開できるようになる。

　Areneにはソフトウェア検証ツールも含まれている。実車による検証を減らし、ソフトウェアのプロセス見える化や検証、評価、管理を仮想環境で実施できるため、従来と比べて早い段階で機能を作り込める。Toyota Safety Senseの開発では、Areneのシミュレーションツールによってさまざまな運転状況を検証した。

　Areneのデータ収集基盤「Arene Data」もToyota Safety Senseに活用する。同意を得たユーザーの走行データを安全に収集、分析して、自動運転システムやADAS（先進運転支援システム）の機能向上や車内アプリケーションのカスタマイズに生かす。無線ネットワークによるアップデート（OTA：Over-The-Air）もArene Dataがサポートする。