和田氏 MaaSのように多くの企業や自治体、公共交通機関などが関連してくる場合、それは誰が政策を立案し、実行することが望ましいのか。どのようにすれば、実行できるのか。
中村氏 まずは行政だろう。地方自治体では、国土交通省が音頭を取った「地域公共交通会議」があり、東京では「東京都市圏交通計画協議会」がある。これらは受け手になるだろう。
ただし、MaaSに関して行政が枠組みを作ったあとで、サービス部分に関して民間が多様な競争することは良いが、多くの枠組みができて、多様なサービスが生まれると、利用者は使い勝手が良くないのではないだろうか。囲い込みをすると、あるMaaSでは、ある事業者の情報が取れず、シームレスにつながらないということが起こる。自社のみの狭い領域ではなく、より包括的なサービスが実現することを期待したい。
さらに、今やるべきなのは、本当に困っている人を助けること。つまり、道路混雑のためにクルマを減らす、道路の交通事故低減、さらに高齢者の外出を支援するといった目的のためにMaaSのような情報技術を使うことが望ましい。
これまでにも「スマートシティー構想」などがあったが、MaaSはそれに匹敵、いやそれ以上のムーブメントになりそうだ。インターネットが発達し、携帯電話機が普及するにつれて、いろいろな乗り物を予約することが可能となってきた。しかし、A地点からB地点まで移動する際に、全ての乗り物、つまりモビリティをシームレスに一括して予約と決済ができるかと言えば、現状ではかなり難しい。
しかし、フィンランドで起きたMaaSは、それを可能にしようとしている。確かに全てのモビリティを予約する必要はないのかもしれないが、夜間の移動などに、タクシーやカーシェアリングなどの予約は有効だろう。日本で実際にMaaSを実現するために、次のことを解決する必要があると思われる。
MaaSは一見、乗り物、つまりモビリティだけの動きに見えるが、今回のヒアリングから俯瞰的に見ると、モビリティやサービス変革にとどまらず、都市交通や都市計画にまでも影響を及ぼすように思える。さらに、MaaSをコントロールするサービスプロバイダーは、自動車業界、鉄道業界、タクシー業界などの垣根を越え、大きな責任や役割を果たすのではないだろうか。
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.