「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

MaaSは鉄道など公共交通や都市計画にどのような影響を及ぼすか和田憲一郎の電動化新時代!(27)(3/5 ページ)

» 2018年04月23日 06時00分 公開

日本でMaaSを実現するための課題は

和田氏 欧州では実現しているとの話があったが、では日本でMaaSを実際に実現しようとする場合の課題はどのようなものがあるのか。

山口氏 このように連携しようとすると、重要になるのがリアルタイムなデータの共有だ。しかし、日本は欧州と違い、多くの事業者により公共交通が成り立っている。そのため、それぞれの事業者の実際のデータをオープンにすることや、事業者同士のデータの連携に課題を感じている。現在は公共交通オープンデータ協議会でその課題の解決方法について取り組んでいるところだ。

和田氏 最後に、MaaSが話題になり始めているが、言葉だけで終わるとブームが萎んでしまう。具体的なプランについてどう考えているか。

中川氏 1つのチャレンジングな目標として求められているのが2020年の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングではないだろうか。現在も訪日外国人の方がたくさん来られる中、鉄道などモビリティの予約や移動方法が分かりにくいといわれている。1つのアプリで目的地まで行けると良いのではないか。上述のコンソーシアムでも小規模ながらさまざまな実証試験を想定している。

和田氏 今回のお話を聞いて、エリア限定でも構わないので、実証試験などを行い、ぜひとも実現につなげていただきたい。

持続可能な都市、「モビリティ・デザイン」とは何か

横浜国立大学 理事 副学長 教授の中村文彦氏

 次に、都市交通計画を専門とする、横浜国立大学 理事 副学長 教授の中村文彦氏に話を伺った。

和田氏 先生は都市交通や都市計画がご専門と伺った。最初に持続可能な都市、また先生が唱えられている「モビリティ・デザイン」とは何かについて教えていただきたい。

中村氏 持続可能な都市とは、言うまでもなく、環境負荷が小さい形で持続し、経済性な効率性も持続し、社会的な公平性も持続することではないかと考えている。環境負荷だけを考えれば、全員が引きこもれば良いのだが、そうではなくて社会に参加しなければならない。また出掛けたいのに出掛けられない人がいてはいけない。この3つがバランス良く成り立つことが重要だ。

 モビリティ・デザインは、私が提唱しはじめた概念だ。これまで建築系(都市計画)と交通に距離があったが、これを縮めようとい狙いがある。都市計画つまりアーバンデザインを考える時に、移動の可能性も検討して欲しいという思いから、それをモビリティ・デザインと名付けた。ここでは必ずしもクルマだけでなく、鉄道、バスなど代わりの乗り物など交通空間を創ることが重要になる。このように交通空間と都市空間をセットで考えていく必要があるのではというメッセージだ。

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