「つながる工場」の実現には、これらのデータを連携することが必要になる。データの連携では共通のデータの意味を翻訳する辞書の存在が重要になるが、製造現場では明確な標準化ができない領域も多く存在する。IVIではこうした共通化や標準化への取り組みとして、以前から複数企業間の共通課題をベースに解決に向けた共通項を標準化していく「緩やかな標準作り」を進めてきた。そしてこの標準作りを基にした「緩やかな共通辞書」も作成し、連携を推進している。
西岡氏は「動かないのは実例がないからで、そういうものを作っていきたい。共通部分は誰が作っていくのかというのは課題となっているが、IVIでの3年の活動の中で共通辞書の蓄積がある。2016年度は4000程度の共通辞書が生まれた。2017年度はその5倍以上蓄積してきた。辞書を再利用できるようにしつつ、オープンクローズ戦略のライフサイクルを回していきたい」と述べている。
「IVRA-Next」では参照モデルを提示するだけでなく、アクションにつなげるための改善アプローチを示していることも特徴だ。製造業における改善手法といえば「PDCAサイクル」が一般的だが、「通常の改善サイクルではPDCAサイクルは効果を発揮するが、大きな革新につなげていくためには、新たなアプローチが必要だ」と西岡氏。革新につなげるアプローチとして有益だと訴えるのが「ERORサイクル」である。
ERORサイクル は、問題発見(Exploration)、 問題共有(Recognition)、課題構成(Orchestration)、そして課題解決(Realization)の4つのステージによって構成される。西岡氏は「まずは悩みごとを観察し問題を発見し現在地を把握する。そしてそれを共有し理想の姿を描く。次にその理想に近づけるためのゴールを設定し、その解決に取り組むというような流れだ」と述べている。
さらに革新を実現するためには「まずは改善ステップで取り組み、効果が見えた段階でより大きな変革に乗り出すというような2ステップの取り組みが効果的だ」と西岡氏は取り組み方について語る。
西岡氏は今後に向けて「より大きな変化を打ち出したい」とし、全体最適に向けた考え方なども示した。その中で第4次産業革命を実現する上で必要なチェックリストや変えるべき点、守るべき点などを訴えた。変えるべきこと(取り組まなければいけないこと)としては「グローバル思考」「オープン&クローズ戦略」「システム思考」「モジュール化思考」を挙げる。一方で守るべきものとしては「徹底したこだわりとおもてなし」「現場で試し、考える現場主義」「人中心で自発的な改善文化」「アナログや暗黙知でも伝える人間力」を挙げる。
訴えているチェックリストは以下の通りだ。
西岡氏は「こうした動きに合わせてIVIも変わっていく。2018年はより分かりやすく変えていく」と述べ、新たに実証テストベッドなどを行うプロジェクトや、先端技術の検証などを行う先端スタディー/インキュベーション分科会を開催する計画を示している。
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