クラウド領域に強みを持つITベンダーがエッジ領域に踏み込む動きも広がりを見せている。
米国Microsoftは、強化を進めてきた「Microsoft Azure(以下、Azure)」を中心とした「インテリジェントクラウド」に加えて、「Windows」などを強みとしエッジデバイスのインテリジェント化を進める「インテリジェントエッジ」を訴求。インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジをシームレスに連携させることで、IoTによるデータ収集とAI関連技術などによる分析の効率的なサイクルを提案する。
2017年11月には「Azure IoT Edge」のプレビュー提供を発表。これは従来Azure上でのみ利用できたAIや先進的アナリティクス技術、機械学習技術などをエッジデバイス上で活用できるというものだ。エッジデバイスとAzureの連携により、クラウドのスケーラビリティとエッジのリアルタイム性を両立できる利点を訴えている※)。
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米国Amazon Web Services(AWS)もエッジデバイス向けへの取り組みを新たに開始した。2017年11月に同社ユーザーイベント「AWS re:Invent 2017」において、マイコンなどを搭載するIoTエッジデバイス向けの組み込みOS「Amazon FreeRTOS」を発表したのだ※)。
Amazon FreeRTOSは、組み込みシステム向けのオープンソースのリアルタイムOS「FreeRTOS」をカーネルに採用。IoTエッジデバイスとクラウドを容易に接続するとともに、セキュリティを確保し、メンテナンスを簡略する機能をライブラリによって拡張するとしている。
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さらに、GoogleなどもRTOS「Fuchsia」を開発中としており、クラウドベンダー側がエッジ強化に取り出す動きはここ1年で大きく高まっているといえる※)。
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背景には先述した「クラウドへの直接接続が現実的ではない」という現状が挙げられるだろう。工場現場とのCPSを構築する場合、リアルタイム性が要求される場面では、通信を挟むクラウドでは遅延の問題が生まれる。さらに、全てのデータをクラウドに送るとすると、膨大な通信コストが発生する。
これらの苦労をして取得したデータだが、全てのデータを集め続ける場合、意味のないノイズになり得るデータも数多く取得することになる。ノイズが多ければ、機械学習や深層学習などの技術では有効な知見を導き出すのは難しくなる。コンピュータサイエンスの世界では「Garbage in, Gabage out」などともいわれており、いくら分析技術が発展したとしても、無駄なデータばかりを集めていては、無意味な結果しか導き出すことはできない。
この課題を解決するためには、データの発生現場に近い領域で「分析に値する“きれいなデータ”を取得する」ということが必要になる。そのためにはエッジ領域の強化は必須になるのだ。クラウドベンダー側はエッジからクラウドまでのシームレスなデータ環境を築くことで、これらのデータサイクルを構築したい狙いである。
2018年もスマートファクトリー化の動きはさらに広がるが、FA側とIT側のさらに多様な提案が進むことから、エッジ領域のリッチ化は加速度的に高まることが予測される。
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