IoTなどの活用の取り組み度合いが高い企業ほど、生産プロセスなどのデータを経営課題の解決などに積極的に生かしている。生産性向上などの現場起点の取り組みには現場が主導となることが有効だが、ビジネスモデル変革を通じた付加価値創出などの経営課題を解決するには、経営層によるトップダウンでの迅速な判断が重要となる。そのため、付加価値創出に必要となるデータの利活用に関しては、経営者や経営戦略部門主導で行うことが効果的だ。
しかし、データ収集・活用を主導する部門を集計したところ「経営者・経営戦略部門」は29.6%である一方で、「製造部門」は44.8%、「情報システム部門」は7.8%となり、52.7%が現場サイド主導でのデータ収集や活用を行っていることが分かった(図12)。ビジネスモデル変革などによる新たな価値を創出する取り組みを強化するには、経営者・経営戦略部門の関与をさらに高めることが課題だといえる。
2017年版ものづくり白書では、IoT活用度と幾つかの指標との相関関係を分析している。工場内でのデータ活用の度合いに応じて4つのグループ(クラスタ)に分類している。クラスタAは、生産現場におけるIoT(モノのインターネット)などの活用が総じて進んでいないグループであり、B、Cと進むにつれ活用度合いが高まり、クラスタDが最も活用が進んでいるグループとなっている(図13)。
それによると、IoT活用に積極的な企業ほど「現場力が向上している」「マーケットイン型の組織見直しを図っている」「M&A(企業買収)やオープンイノベーションなどの外部資源を活用している」などと正の相関関係があることを示唆しているという。
ここまで見てきたように、日本の製造業(ものづくり企業)の主要課題を大別すると「人手不足の顕在化」「収益率の低さ」の2つが考えられる。今後は、従来の強みである「現場力」を維持し向上させる「プロセス変革」、これまでの弱みだった新しいサービスソリューション構築を図る「ビジネス変革」を両立させることが重要となる。いずれにおいても「IoTなどのデジタルツールの積極活用」が鍵を握ると考えられる。
後編では、製造業が今後目指すべき方向性やIoTなどのツールを活用した先進事例、日本政府が描く産業の未来像などを取り上げる。
翁長潤(おなが じゅん)
フリーライター。証券系システムエンジニア、IT系雑誌および書籍編集、IT系Webメディアの編集記者の経験を生かし、主にIT・金融分野などで執筆している。
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