「エッジリッチ化」の流れの一方で、この高機能なエッジコンピューティングを活用することで、全体システムのシンプル化を実現しようという動きも明確になってきている。
シンプル化の動きの中で特徴的だったのが、各種機器のコントロールを一元化しようという動きである。従来のFA機器は、通信プロトコルやコントロール環境なども全てメーカーや機器に合わせて個別化されていた。そのため、システム単位で捉えた場合、現場にはさまざまなシステムが乱立している状況が生まれていた。これらを「エッジリッチ」なコンピューティングパワーを活用し、一定レベルで集約しようとする動きが広がりを見せている。
安川電機は、「アイキューブ メカトロニクス」のコンセプトのもと、スマートフォンのBTO生産をイメージしたデモ生産ラインを出展。データ見える化を実現する「YASKAWA Cockpit」に加え、ロボットと機械のコントロールを一体で制御する機能なども紹介した。通常、ロボットの制御にはロボットコントローラーが、各種製造機械などの制御にはマシンコントローラーが個別に必要となり、同じ制御システム上では動作しない。そのため個別の制御システムが必要となり、設定や配線の複雑化などの要因となっていた。これを1つのコントローラーで実現できる仕組みを作ったことで、シンプル化を実現している(※)。
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同様の仕組みは、ベッコフオートメーションなども紹介。ロボットと同社のリニア搬送システム「XTS(eXtended Transport System)」を産業用PCを通じて一体制御し、ペンを最適な位置に抜き差しするデモを行った(※)。
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また、MECHATROLINK協会は、センサーデータとモーションデータの一元管理を行える「Σ-LINK II」を紹介した。「Σ-LINK II」は、サーボアンプとサーボモーター間のエンコーダー用通信を発展させ、センサーなどのI/O機器を接続可能としたものだ。センサーなどの情報を直接サーボアンプに取り込み、MECHATROLINKとの連携によりセンサーデータとモーションデータを同期させることができる。MECHATROLINK協会 事務局代表の三輪卓也氏は「『Σ-LINK II』は他にあまりない技術なので多くの問い合わせがあった」と手応えについて述べていた(※)。
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製造現場にIoTなどの新たな技術が入ってくる中、これらを使いこなすためには、シンプル化は必須となる。エッジリッチ化が進む中で、ソフトウェアで定義できる領域が大きく増えることを考えても、システム間の違いをソフトウェアでできる限り吸収する動きは広がりを見せると考えられる。
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