ファナックとPreferred Networksは「国際プラスチックフェア2017」で、AI技術を搭載し予防保全を実現する射出成形機を披露した。
ファナックとPreferred Networks(以下PFN)は、「国際プラスチックフェア2017」(2017年10月24日〜10月28日、幕張メッセ)で、ディープラーニング(深層学習)を活用し予防保全を行う電動射出成形機を披露した。
ファナックとPFNは、2015年6月に「機械学習(マシンラーニング)を活用した産業用ロボット技術の高度化」に向けた技術提携でファナックと提携。その後資本業務提携にも拡大し、両者での製造現場の知能化に取り組んでいる。2016年4月18日には、人工知能機能などもアプリケーションとして組み込んだIoTプラットフォーム「FIELD system」を、両社とCisco Systems、Rockwell Automationとともに立ち上げることなども発表しており、さまざまな取り組みを進めている(※1)。
(※1)関連記事:製造業IoTに新たなデファクト誕生か、ファナックらが人工知能搭載の情報基盤開発へ
その中で、2015年12月の国際ロボット展では「機械学習による産業用ロボットのティーチング」を実現。従来の産業用ロボットには難しかった、バラバラに積まれた部品のピックアップを、機械学習を活用することで、高精度につかむことができるという技術を披露した。
これは、産業用ロボットが適当に部品を取り上げようとしてその成否を記憶しながら重ねていくことでピッキング成功率を高めるというもの。成功する3次元形状のパターンを学習して、ティーチングなしに成功率を高めることができるという。約8時間でピッキング成功率を90%程度にまで引き上げることができ、さらに複数台を並行して学習させることで、より短い時間でティーチングを完了することなども可能とした。
今回は新たに、射出成形機の予防保全にAI技術を活用した。ファナックの電動射出成形機である「ロボショットα-SiAシリーズ」の予防保全を行う「AIバックフローモニター」を共同開発した。
「AIバックフローモニター」は、射出成形機の消耗品である逆流防止弁の摩耗状態をディープラーニングで評価、予測し、消耗品が「壊れる前に知らせる」という機能である。逆流防止弁の摩耗が進むと、隙間が大きくなり、逆流状況が発生する。これを逆流状況のデータ波形をディープラーニングで学習し分析することで、摩耗状況の進行度をスコアリングする。摩耗スコアにより、新品から何mm摩耗したかを判別することができるというものである。
従来は、樹脂の逆流状況を示すデータ波形の形状変化を人間が見て、逆流防止弁の摩耗状態と交換時期を推測していた。これを自動化し、最適な予防保全を実現する。ブース担当者は「素材や作る製品の種類、環境などによって、摩耗状況や摩耗によって生じる故障などの状況も変わる。しかし、逆流防止弁の状況は機械を止めて分解しないと見ることができない。従来は熟練技術者の経験で見極めてきたが、それが外れると生産ラインがストップし甚大な機会損失が生まれていた。これをAIにより自動化することで、作業員の熟練度によらずに安定した生産を実現できる」と述べている。
「AIバックフローモニター」はロボショットのオプションとして提供され、2018年1月から受注開始予定だ。
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