製造業のサービス化、予兆保全は単なる「はじめの一歩」いまさら聞けない第4次産業革命(7)(1/3 ページ)

製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第7回は、前回に引き続き「製造業のサービス化」についてご紹介します。

» 2016年09月26日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]

本連載の趣旨

 「第4次産業革命」や「インダストリー4.0」などの言葉を聞かない日はないほど、大きな注目を集めています。4番目の産業革命とされている通り、製造業の業態についても大きな影響を与える「第4次産業革命」ですが、その認識レベルや捉え方は置かれている立場や状況で大きく異なります。また「第4次産業革命とは結局何?」という人から「抽象論は分かったから具体的な技術の話が聞きたい」など求める情報レベルも大きく幅があるように感じています。

 そこで本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介していくつもりです。

※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoTによる製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


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米国 好男(よねぐに よしお)

米国の第4次産業革命関係の事情に詳しい調査会社の社員。印出さんと交流がある。アメリカ好きがとことんまで極まっているが、東京・浅草生まれの生粋の日本人である。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

第6回:「第4次産業革命で『製造業がサービス業になる』ってどういうこと?

あらすじ背景

 従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。


 さて前回は、「第4次産業革命」で進むとみられている「製造業のサービス化(サービタイゼーション)」について紹介しました。

 少し振り返ってみましょう。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)により製品は常にデータを送受信するようになります。これにより、製品に最適な形でセンサーを付けていれば、製品の稼働状況や製品が置かれている周辺環境などが常に把握できるようになります。また、こうした情報はデータとして蓄積することができます。このデータをビッグデータ分析や深層学習などで分析することで、製品や周辺環境の“傾向”を把握することができます。ここから生み出した価値は、製品の販売だけでなく、新たなサービスとして販売することができます。こうした動きが「製造業のサービス化(サービタイゼーション)というわけです。

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製造業であっても必ずしも「製品」を売ることだけで価値を生み出さなくてもよくなるわ。「モノ」から「コト」へという流れね。


 さらに、こうしたサービタイゼーションの端緒となる動きとしてアフターメンテナンスサービスを高度化する稼働監視や予兆保全などの採用の動きが製造業で高まっているということでした。印出氏は以下のような点を指摘しています。

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稼働監視や予防保全への取り組みが加速しているのは、費用対効果が見えるから経営者が投資しやすいという理由があるわ。機器の故障による販売機会損失や損失補填などのコストに対し、どれくらいの投資で、どれくらい故障を減らせるかということが試算できれば、利益が明確に出せるもの。


 ただ、こうした稼働監視や予防保全の動きは、「製造業のサービス化」として取り上げられる動きのほんの一部の成功モデルでしかありません。さまざまな製造業が新たな価値を掘り起こすことで、さまざまな方向での可能性が生まれようとしています。今回は第4次産業革命において「本来の価値」としても見られているIoTによる製造業のビジネスモデル変革の動きについて紹介します。

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