PTCは、スマートシティーソリューションとIoT向けアプリケーション開発運用プラットフォーム「ThingWorx」の提供により、社会イノベーション事業への取り組みを強化する方針を示す。
PTCは、スマートシティーソリューションとIoT向けアプリケーション開発運用プラットフォーム「ThingWorx」の提供により、社会イノベーション事業への取り組みを強化している。スマートシティー領域は「年平均18%の伸長率を誇り、全米でも約6割以上の都市が何らかの取り組みを行っている」(PTCジャパン バイスプレジデント アッシャー・ガッバイ氏)という成長市場であり、PTCでは、新事業を業績拡大の新たな柱としていく方針だ。
世界の都市では、現在大きな問題を抱えている。その1つは都市部の人口の増加であり、2050年までに2倍に拡大するとの予測もある。それに伴い、水やエネルギーの消費およびサービスの提供拡大、交通渋滞などさまざまな課題がもたらされた。これに、環境維持に関係する新たな目標と規制なども加わり、限られた予算の中でその解決策が求められ、その答えの1つとしてさまざまなIoTソリューションへの期待が集まっている。
PTC ディビジョナルバイスプレジデントのレズリー・ポールソン氏によると「スマートシティーに対して、IoTの技術を活用することで2025年の時点で1.7兆ドルの価値が生まれる(都市にもたらす経済効果の可能性)という予測がある」と述べている。
スマートシティーは大きく分けて、発電とグリッド(分散電力管理、スマートグリッドの運用など)、上下水道(水道管管理、浄水場管理など)、ビル管理(ビルエネルギー管理、ビル運営情報とメンテナンスなど)、市民サービスとインフラ(スマート照明、スマートパーキング、交通管理など)の4つの分野で構成されている。
このうち、同社の取り組みの1つの例として取り上げているのが都市インフラの1つである街路灯だ。現在、世界で設置されている街路灯の数は3億1500万基があるといわれる。IDC(IT専門調査会社)の予測ではこの街路灯が2019年までに1億8000万基がLED照明に移行する見込みだ。その費用には800億ドルが必要となるが、スマートコネクティッド照明の導入により、電気料金と維持管理費用は25〜30%削減が可能だとみられる。また、照明はスマートシティーにおける主要ベンダーの主なソリューションの1つとなっており「光源の切り替え工事の際に、街路灯にさまざまセンサーを組み込んでしまうケースも増えてきている。スマートシティーへ向けたIoTの取り組みは、このあたりから始めるのが良いと思われる」(ポールソン氏)。
さらにポールソン氏は、スマートシティーの取り組みはこうした照明などのポイントソリューションから開始し、将来の複合的なシステムの構築を見据えた場合は、その基盤としてプラットフォームを導入することがより効果的であることを指摘する。
同社のThingWorxプラットフォームは、コミュニティーとの連携により、各種のIoTソリューションを同一のテクノロジーインフラ上で提供することが可能だ。例えばThingWorxプラットフォームとコミュニティーを活用し、素早くIoTソリューションを開発することができる。また、ThingWorxソリューションプロバイダーが豊富な標準機能を有するIoTソリューションを提供することが可能となる。
さらに、情報の分断を解決し、投資効果を提供する各役割(職種)向けに情報ダッシュボードを作成する。この他、都市のコミュニティー、大学、インキュベーター、企業が既存環境を活用して革新的なIoTアプリケーションを開発するための全市プラットフォームも提供できる。
こうしたスマートシティープロジェクトは世界178都市で252のプロジェクトが進められているという。PTCも数社のパートナーとともに既に取り組みを開始している。このうちVodafoneはThingWorxを利用して、自社やパートナーのマーケットで利用可能な高速イノベーションを実現する主要IoTアプリケーション群のライブラリを開発。エンドユーザーの要求に基づく高い可搬性、モジュール化、高度なカスタマイズ性を実現した。
英国のミルトンキーンズ市では、MK:Smart(PTCのパートナー)が同市の経済成長を支援するソリューションを開発している。このプロジェクトの中心となっているのが最先端の「MKデータハブ」の開発であり、このハブを利用して市のシステムに関する膨大なデータをさまざまなデータソースから収集し管理する予定だ。収集するデータにはエネルギーや水の消費量、輸送データ、衛星技術を使用して収集したデータ、社会・経済データなども含まれる計画だ。
この他、田淵電機では太陽光発電システム用の「産業用・遠隔監視サービス」に「Toami powered by ThingWorx」を活用している。NTTドコモが提供する「docomo M2Mプラットフォーム」およびデータ通信回線を使ったもので、稼働状態の定期確認や異常をチェックし、発電トラブルの解消をより迅速に行う。将来的には電力会社により、運用が開始されている遠隔出力制御にも迅速に対応することが可能だ。
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