PTCは、年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2017」において、IoTプラットフォームの新バージョン「ThingWorx 8」を発表。PTCがThingWorx以降に買収してきたさまざまな企業のソフトウェア/ツールがより緊密に統合され、“ネイティブ”な機能として加わった。生産ライン向けの役割ベースアプリケーションも追加する。
PTCは2017年5月23日(現地時間)、米国マサチューセッツ州ボストンで開催中の年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2017」(同年5月22〜25日)において、IoT(モノのインターネット)プラットフォームの新バージョン「ThingWorx 8」を発表した。6月8日にWebサイトからダウンロード可能になる。
ThingWorxはPTCが2013年12月に買収したIoTプラットフォームである。「Thingモデル」と呼ぶモノを表すモデルを使って、IoT向けのアプリケーションを柔軟に開発できることを特徴とする。
新バージョンのThingWorx 8は、ThingWorx以降にPTCが買収してきたさまざまな企業のソフトウェア/ツールがより緊密に統合されたことが特徴。5月23日に行われた講演で、PTC ThingWorx製品担当エグゼクティブバイスプレジデントのマイケル・キャンベル(Michael Campbell)氏は「ネイティブ(Native)」という言葉を使って、それらのソフトウェア/ツールの機能を標準的に利用できることを強調した。
ThingWorx 8のネイティブな新機能は4つある。1つ目はIoTクラウドへの接続性を担保する「Native IoT Cloud Integrations」だ。これまでサポートしてきたAmazon Web Servicesの「AWS IoT」やマイクロソフトの「Azure」に加えて、2017年夏からGEの「Predix」への対応も始める。また、化学プラントなどで広く用いられているOSI Softのプロセス制御ソフトウェア「PI System」との接続も可能になるという。PI Systemへの対応は、組み立て系のみならずプロセス系の生産ラインにもThingWorxの採用を広げるきっかけになりそうだ。
2つ目の「Native Industrial Connectivity」は、産業オートメーションデータの活用が可能な「KEPServerEX」の機能になる。PTCが2015年12月に買収したKepware Technologiesの技術で、さまざまなプロトコルやデータシステムなどが乱立する産業オートメーションデータのうち150種類以上に対応していることが特徴だ。
3つ目はIoTから得られたデータの異常検知を簡単に組み込める「Native Anomaly Detection」である。一般的に、こういったビッグデータから異常を見いだ異常検知機能は、予防保全などに活用できることから需要が高い。ただし、分析技術などを用いる必要があるためIoTアプリの開発者は異常検知に取り組むのはハードルが高い。
ThingWorxでは、2015年5月に買収したCold Lightの機械学習や予測分析技術を組み込んだ「ThingWorx Analytics」を2016年から提供している。ThingWorx 8でも高度な分析や予測モデルの構築、自動化などが可能になっている。
しかし今回のNative Anomaly Detectionは、Thingモデルを使ってIoTアプリを開発する「ThingWorx Composer」の基本機能として組み込まれている。異常検知機能を組み込みたい場合には、対象となるThingモデルから「Anomaly」を選択するだけで良いという簡易さが最大の特徴といえるだろう。
4つ目は「Native Microsoft HoloLens Authoring」で、その名通り、マイクロソフトのスマートグラス「HoloLens」向けのAR(拡張現実)コンテンツを作成できる機能だ。PTCが2015年11月に買収したARプラットフォーム「Vuforia」は、「ThingWorx Studio」としてThingWorxに統合されている。Native Microsoft HoloLens Authoringでは、既存の3D CADデータを用いたステップバイステップのプロセスによって、数分間でHoloLens向けのARコンテンツを作成できる。「従来は何週間、何カ月もかかっていたものを大幅に短縮できる」(キャンベル氏)という。
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