ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は日本の完全失業率の変化をご紹介します。
今回は、仕事ができる(したい)のに仕事に就けない人の割合である完全失業率についてご紹介します。参照するのは労働力調査の統計データです。
日本は失業率の低い国としても知られていますね。そもそも失業率とはどのように定義されて計算されているのか、日本の失業率はどの程度なのかを確認していきましょう。
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まず、就業状態がどのように定義されているのかを見てみましょう。以前ご紹介した通り、統計上は就業状態が次のように区分され、集計されています。
分かりやすく言い直すと、「15歳以上の労働力人口のうち、仕事ができる準備ができていて、仕事を探しているけれども、仕事の無い人」が完全失業者として集計されているということになります。
この区分は、国際労働機関(ILO)の定義に従ったもので、国際的に共通の区分方法であるようです。ニュースなどでも耳にする失業率とは、一般的に労働力人口に対する完全失業者の割合を計算した完全失業率を指します。
分母が人口全体ではなく、非労働力人口を除いた労働力人口となっている点は重要ですね。そもそも学生であったり、専業主婦だったり、高齢で退職していたり、療養中だったりと、定期的な給与収入のない人はカウントされていません。
例えば、退職して家庭での介護に専念している人は、求職活動をしているわけでも仕事に従事するための準備をしているわけでもありませんので、完全失業者には該当しないことになります。
上記のような点を踏まえて、まずは日本の労働力人口や完全失業者数の推移を眺めてみましょう。
図1が日本の就業者数(青)、完全失業者数(赤)、労働力人口(黒)と、完全失業率(緑)をまとめたものです。就業者数は前回ご紹介した通り、1990年代から6500万人前後で推移しています。一方で、労働力人口は1997年までは増加していて6700万人前後で推移してきました。そのギャップとなる完全失業者数は、1990年代から2010年代でやや増加していた時期があるようです。
完全失業率で見ると、バブルの始まる1980年代後半から減少傾向となり、バブル崩壊の1991年を境に上昇傾向に転じています。さらに、日本経済の転換点となった1997年からは急激に上昇しているのが確認できますね。
その後2002年を境にいったん低下しますが、2008年のリーマンショックを機に再度上昇したのち、減少傾向が続いて2018年ごろから3%弱で安定しています。
バブル崩壊、1997年、リーマンショックと、経済危機の都度完全失業率が上昇するという傾向が見られますね。その点で見ると、コロナ禍の影響とみられる2021年、2022年は若干上昇したとはいえ、かなり低めに抑えられているのが印象的です。雇用調整助成金など、雇用を維持する政策などにより完全失業者があまり増えなかったといえるのかもしれません。
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