続いて、男女別、年齢階層別の完全失業率についても傾向を確認していきましょう。まずは男性からです。
図2が男性の年齢階層別に見た完全失業率の推移です。程度の差はありますが、アップダウンのタイミングは一致していて、連動していることがわかります。
年齢階層別にみると特に15~24歳の若年層で高いことが確認できます。1990年代終盤から2010年代中頃までが失業率の高い期間となっています。特に1993年から2005年は、この時期に社会に出た就職氷河期世代の失業率が高いことがよく分かります。
NEET(Not in Education, Employment, or Training)と呼ばれる、仕事も学業もしていない人々が社会的に注目を集めたこともありました。本来NEETは就業の意思のない人を指しますので、完全失業者には該当しないはずです。ただ、その境界はあいまいなものという指摘もあるようです。希望した就職口が見つからず、無業状態の人が多数含まれている可能性もあるかもしれませんね。
近年、25~34歳の年齢階層の完全失業率は全年齢の平均値を上回りやや高い水準となっています。一方で55~64歳の年齢階層では2000年代以前かなり高い水準だったのが、近年では25~34歳を下回っているのが印象的です。
以前は定年退職後の働き口が見つからないなどの課題があったのが、定年の引き上げや再雇用制度の充実などで失業しにくい環境になったのかもしれません。働き盛りの35~54歳の年齢階層は相対的に完全失業率が低い特徴も確認できます。
最後に、女性の年齢階層別に見た完全失業率についても確認してみましょう。
図3を見ると、15~34歳の年齢階層が相対的に完全失業率が高くなっています。この傾向は男性と一致しています。25~34歳も相対的に完全失業率が高く、逆に55~64歳ではかなり低い水準で推移していて、男性とは異なった傾向となっているようです。
結婚や出産に伴って退職し再就職が難しい人が多いのかもしれません。一方で、女性では無給の家族従業者が減り、その分パートタイム労働者が増えてきたといういきさつがあります。これを踏まえると、55~64歳にはパートタイムでの仕事を希望している人が多く、一方で働き口も豊富に存在するため仕事を見つけやすいという背景もあるかもしれませんね。
今回は、労働力調査の統計データから、日本の就業者数や完全失業者数、労働力人口の統計データを確認し、失業率の推移をご紹介しました。
日本は失業率の低い国として知られていますが、若年世代でやや高いことや、全体的に失業率が高まった時期があるなど、特徴的なポイントも幾つかありそうです。特に筆者としては、男性の25~34歳の年齢階層において完全失業率が1980年代以前よりも高い水準で安定してきているのが気になります。
少子高齢化によって若年世代の人口が徐々に減っていく社会情勢にありますが、完全失業率はかつてよりも高い状況です。
各所で人手不足が叫ばれる中で、仕事をしたくてもできない人の割合が増えているというのもどこか歪さを感じますね。若い人が就きたいとは思えない仕事が多いのかもしれません。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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