ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第11回では、先進国の産業の生産性や労働者数のシェアを可視化します。
今回は、主要国の産業別の生産性についてご紹介します。参照する統計データは、OECDデータベースのうち「Gross domestic product」と「Population and employment by main activity」です。
日本は製造業など「工業」のGDPが減少し、1990年代から見れば産業規模が縮小しています。また、公共的な分野の産業が他の主要国と比べて規模が小さいという特徴があります。
今回は各国産業の生産性や労働者数のシェアを可視化することで、工業の立ち位置や、産業全体の「重心」がどこにあるのかを探ってみましょう。
図1は生産性の指標となる労働者1人あたり付加価値について、主要国の産業別にまとめたグラフです。
労働者1人あたりGDPは、各産業のGDP(付加価値の合計値)を労働者数(Total employment)で割ったもので、各産業の労働者が1年間で稼ぐ付加価値の平均値(=生産性)という事になります。
バブルの大きさ(面積)が各国内での全体に対する各産業の労働者数のシェアを表します。つまり、バブルが大きいほど、その国での労働者数が多い産業ということになります。
このように整理する事で、産業ごと、国ごとの傾向が読み取れます。各国ともおおむね似通った特徴があることが分かりますね。例えば、どの国でも情報通信業や金融保険業は生産性の高い産業ですが、労働者数の少ないエリート産業といえるような立ち位置です。建設業は生産性が中程度で、労働者数が少ない産業と言えます。
一般サービス業と公務・教育・保健は労働者数が多い産業ですが、生産性は中程度の産業です。労働者数と生産性の程度を鑑みると、これらの産業が産業全体の「重心」とも言えそうな立ち位置にあることが分かります。
そしていずれの国でも、工業は情報通信業や金融保険業に次いで生産性が高く、労働者数も比較的多い産業である点で共通しています。ほとんどの国で、工業は一般サービス業や公務・教育・保健に次いで労働者数が多くなっているようです。つまり、工業は生産性も労働者数も多い、各国産業の「稼ぎ頭」としての立ち位置にあります。
国別に見ていくと、まず米国(赤)は全体的に生産性が高く、専門サービス業、情報通信業、金融保険業の分野ではひと際抜きんでています。英国(水色)も金融保険業の生産性が極めて高いという特徴が見受けられます。
日本はどの産業の生産性も主要国の中では低位にあります。他国で見られる産業別の労働者数、生産性の特徴はおおむね日本でも共通していますが、公務・教育・保健の労働者数シェアに関しては、他国に比べて相対的に小さいようです。
表1に工業、情報通信業、金融保険業、公務・教育・保健、全産業の平均値をまとめてみました。なお、2021年の為替レート(年平均値)は次の数値で算出しています。
国 | 工業 | 情報通信業 | 金融保険業 | 公務・教育・保健 | 全産業平均 |
---|---|---|---|---|---|
日本 | 10万5386 | 11万6887 | 12万7768 | 6万4402 | 6万5600 |
16.5% | 3.3% | 2.5% | 19.7% | - | |
アメリカ | 18万7759 | 24万9878 | 256,573 | 10万8502 | 13万305 |
11.3% | 4.4% | 4.9% | 29.2% | - | |
ドイツ | 11万4627 | 13万4728 | 13万4010 | 6万3456 | 7万7507 |
18.2% | 3.2% | 2.4% | 26.3% | - | |
フランス | 11万7221 | 15万3085 | 13万329 | 7万172 | 7万9994 |
10.3% | 3.4% | 2.8% | 29.8% | - | |
イギリス | 13万4307 | 12万7354 | 22万5447 | 6万7978 | 7万6892 |
8.8% | 4.5% | 3.5% | 26.2% | - | |
G7平均 | 12万7161 | 14万2857 | 16万2409 | 7万2398 | 8万1527 |
13.3% | 3.6% | 3.4% | 25.2% | - | |
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