スタートアップ企業の展示会「Slush Tokyo 2017」において、日産自動車 代表取締役社長兼CEOのカルロス・ゴーン氏が自動運転技術や電気自動車の展望、異業種やスタートアップ企業との連携について語った。
スタートアップ企業の展示会「Slush Tokyo 2017」(2017年3月29〜30日、東京ビッグサイト)において、日産自動車 代表取締役社長兼CEO(※1)のカルロス・ゴーン氏が自動運転技術の展望や、異業種やスタートアップ企業との連携について語った。
(※1)2017年4月1日付で西川廣人氏が社長兼CEOに就く。ゴーン氏は代表権のある取締役会長を務める。
ゴーン氏は、自動運転技術が社会にも個人にも利益があるものだと説明した。交通事故の90%がヒューマンエラーによって起きており、自動運転技術は安全性の向上に貢献するとしている。また、多くの人が渋滞の中で1日の少なくない時間を過ごしていることに対しても、解決策となり得るという。
さらに、高齢者や郊外に暮らす人々の移動の自由を確保する上でも役立つと語った。特に日本では政府が高齢ドライバーによる交通事故の多さを課題として捉えており、自動運転車で事故防止に貢献していく。
日産自動車は既に、ミニバン「セレナ」に単一車線での自動運転技術として「プロパイロット」を採用した。欧州向けのSUV「キャシュカイ」にもプロパイロットを採用するなど設定車種を増やしていく計画で、2020年までに10車種以上に展開する。
自動化は段階的に高度にしていき、2018年には複数車線での自動運転を投入するとしている。2020〜2021年には「ノーマルコンディション」での市街地の自動運転を、2022〜2023年ごろに市街地の全てのコンディションに向けた自動運転を製品化する。
無人運転技術の開発にも取り組み、ロボットタクシーとして市場投入すると語った。ディー・エヌ・エー(DeNA)や、フランスの大手公共交通機関のTransdev(トランスデブ)との共同開発を発表している。
自動運転の実現に向けては、多くの新しい“部品”が必要だと説明する。コンピューティング、地図、センサーといった技術の進化が自動運転を可能にするという。自動車メーカーとして特に重要なのが、センサーの進化と人工知能技術だとゴーン氏は語った。そのため、さまざまな企業と連携し、パートナーとして組む必要性が増すとしている。
パートナーとの関係性について、ゴーン氏は「自動車メーカーは自動車を設計し、部品や技術を組み立てる役割がある。自動車には何千というパーツが必要で、それは世界中のサプライヤから供給を受けていく。マスメディアはGoogleやAppleによって自動車メーカーが脅かされるという見方を好むが、彼らは自動車産業に参入しないだろう。彼らが興味を持っているのは、次の重要なオブジェクトは何かということだ。携帯電話はメールや電話に限らずさまざまなことができるパーソナルなデバイスになった。クルマは移動するデバイスとして、仕事をしたり映画を見たりするパーソナルなスペースになるだろう。将来に向けて、パートナーと一緒に変革を起こしていきたい」と述べた。
スタートアップ企業との関わり方についても考えを説明した。「よく私たちのところに技術や部品、パーツなどを提案しに来てもらっている。スタートアップ企業とどのようにコラボレーションできるか、大きな挑戦になるだろう。大きな組織のわれわれにとって、小さく機動力のある企業と共に働くのは簡単ではない。どのように一緒に働けるか、学ぶ必要がある。スタートアップ企業で働いた経験を持つ魅力的な人々には参加してもらいたいし、才能のあるスタートアップ企業を買収するということもあるかもしれない。だが、働き方や目的が違うので、スタートアップ企業と競うつもりはない」(ゴーン氏)
イノベーションを狙うスタートアップ企業からの参加者に向けては、誰もが実現を信じるアイデアはイノベーションではないと呼びかけた。
「電気自動車の『リーフ』を発売したのが2010年12月だ。電気自動車の時代なんか来るわけがないと多くの人が考えていた。イノベーションを起こすには、信じない人にもアイデアを分かってもらう必要がある。例えば、米国は自動車をほぼ1人1台を所有するようになったが、新興国でも同じことが起き、市場が拡大するとは考えにくい。エミッションが問題になるからだ。これに対し、電気自動車はシンプルな解決策になる。ゼロエミッションビークルなしで、われわれの産業の未来はない」(ゴーン氏)。
ゴーン氏は日産自動車に派遣されてきた当時のことも振り返った。「日産自動車を立て直せるかどうかということも皆信じなかったが、日産リバイバルプランは成功した。日本企業とフランスの企業がうまくやっていけるのか疑問視されたが、ダイバーシティーとして考えれば見方が変わる。ルノー・日産アライアンスには、三菱自動車も含めたくさんの企業が参加している。出自の異なる者同士が共に働くことで、強くなるし安定できるはずだ」(ゴーン氏)
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