日立製作所は、新たに開発した半導体向け3Dプリント技術を活用することで、MEMSセンサーの製造期間短縮が可能になると発表した。適用事例では、振動MEMSセンサー100個を1カ月で設計・製造可能になることを確認した。
日立製作所は2017年2月15日、新たに開発した半導体向け3Dプリント技術を活用することで、MEMSセンサーの製造期間短縮が可能になると発表した。これまで3カ月〜1年程度必要だった設計・製造を、3Dプリント技術に加えてセンサーの形状や寸法をAIで自動設計する技術を用いることで、振動MEMSセンサー100個を1カ月で設計・製造できることを確認した。
設計では、同社が有する100万以上のMEMSセンサー設計データの中から顧客のニーズに近いものを抽出し、その構造を基にシミュレーションを行う。センサー抽出はAIのクラスタ分析を用い、シミュレーションはデータから構造と性能の相関を解析した結果に基づいて行う。
この設計図を基に、1000分の1mm以下の集束イオンビーム(FIB)を照射し、微細なMEMSセンサーの構成部品を3Dプリントで形成。従来のFIB装置は加工速度が遅くMEMSセンサーの製造には向いていなかったが、日立ハイテクノロジーズ/日立ハイテクサイエンスとの共同開発により、FIB装置のイオン源にプラズマイオン源を用いることでビームの高出力化を実現し、加工速度が大幅に向上した。
適用事例として、工場のモーターやコンプレッサーなどの故障予兆検知を目的とした振動MEMSセンサーを試作した。従来品と同等の性能を備えたセンサーを5日で設計し、1個を5時間で製造できたため、100個なら1カ月で設計・製造が可能になる。
今後拡大が見込まれるIoT(モノのインターネット)社会では、顧客の要求に応じた多種多様なセンサーの提供が課題になる。IoT向けセンサーの多くはMEMSと呼ばれる微細な電気機械デバイスで、大量生産に向く半導体工場で製造されているため、さまざまな仕様のセンサーを少量かつ短期間で生産することは難しかった。同社は今回、製造期間の短縮を成功させたことで、さまざまな現場の要望に合わせたMEMSセンサーを迅速に提供し、IoT社会をけん引していくとしている。
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