特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

NECAが描く、日本型モノづくりの将来像「5ZEROマニュファクチャリング」スマートファクトリー

日本電気制御機器工業会(NECA)は、2015年から取り組んできた「第4次産業革命」WGにおいて、新たなモノづくりの将来像「5ZEROマニュファクチャリング」を提示し、今後の方向性について提言を行う。

» 2017年01月23日 13時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 日本電気制御機器工業会(NECA)は2017年1月20日、モノづくりの将来像とともに、電気制御機器にとってIoT(モノのインターネット)などによる業界の大きな変化にどう対応していくべきかを示す「5ZEROマニュファクチャリング」を発表した。

 NECAは、電気制御機器産業を核とし、同機器の産業発展や標準化などの取り組みを行う団体である。1964年に任意団体として設立され、1993年に社団法人化、2012年に一般社団法人へと移行している。リレーやスイッチやセンサーなどの制御機器やFAシステムなどを対象とし、これらに関連する産業の振興や標準化、安全基準の策定などに取り組んできた。

 しかし、ICTの進化やモノづくりのノウハウを他産業で活用する動きを拡大する動きが加速。その中で制御機器やそのノウハウなどもさまざま領域で利用されるようになっている。特に、ドイツのインダストリー4.0を中心に製造現場におけるICT活用が本格化の兆しを見せる中、製造現場や制御機器そのものの在り方も変化している。これらの動きを受け、NECAでは2015年4月に、この第4次産業革命に対し電気制御業界がどうしていくべきかという方向性を模索する「第4次産業革命WG」を設置。電気制御業界として第4次産業革命に向けた方針をまとめるための取り組みを進めてきた。この取り組みの1つの成果として示したのがNECAが考える新たなモノづくりの形「5ZEROマニュファクチャリング」である。

「5ZEROマニュファクチャリング」とは

 NECAが提唱する「5ZEROマニュファクチャリング」は日本のモノづくりの強みである、QCDS(品質、コスト、納期、安全/セキュリティ)と設備保全、匠の技などを踏まえた上で、第4次産業革命の潮流に応じてどのように対応していくべきかを検討したものである。具体的には5つのゼロで始まる制御機器を活用したモノづくりの理想像を作った。5つのゼロは以下の通りである。

photo NECA会長の曽禰寛純氏
  1. 生産ロスゼロ(Zero Production Loss)
  2. 欠陥ゼロ(Zero Defect)
  3. 納期遅延ゼロ(Zero Late Delivery)
  4. 事故ゼロ(Zero Accident)
  5. 生産ライン停止ゼロ(Zero Downtime)

 NECA会長の曽禰寛純氏(アズビル)は「2011年に2020年までのビジョンとして『3S』を訴えたが、今回は2030年くらいまでを視野に新たなモノづくりの形として『5ZEROマニュファクチャリング』を訴えていき、次世代の制御機器の形を模索していく」と述べている。

 NECAではさらに、2030年までにこの「5ZEROマニュファクチャリング」がどのように進化していくのか、という点を4つのレベルで定義する。レベル1が手動と一部が自動化されている段階、レベル2が一部が機械化、自動化されており一部協調が始まる段階、レベル3が機械化・自動化が進み協調が実現できる段階、そしてレベル4が機械と人工知能(AI)により自律化を実現できる段階としている。

 さらに、日本の現場力として語られる「匠の技」についてもこの4段階のレベルに合わせ、レベル1が教育、レベル2がアーカイブ化、レベル3が再現技術、レベル4がスパイラルアップ、と定義している。NECAの第4次産業革命検討WGの委員長である葉山陽一氏は「日本のモノづくりの強みであるPDCAサイクルや匠の技などもロードマップに織り込んだことが特徴である」と述べている。

photo NECAが策定した「5ZEROマニュファクチャリング」とそのロードマップ(クリックで拡大)出典:NECA

 今後に向けては「今回の『5ZEROマニュファクチャリング』をベースにどういう制御機器が必要になるのかという具体的な活動に落とし込んでいく活動を進める。製造業のサービス化などのトレンドも生まれているが、これらに対しても対応できるようにする。さらにこうしたIoTによるデータ活用の動きはデータのプロファイルが必要になるが、制御に最適なデータプロファイルの在り方なども検討していく」と葉山氏は述べている。

 こうした第4次産業革命に向けた将来像やモデルについては、既に国内でもIVIなどの団体活動が進んでいる※)が「日本電機工業会など工業会間での連携などは進めているが、今後は必要な団体とは連携を進めながら、最適なかたちを探っていきたい」と葉山氏は述べている。

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