注意を払っていても発生する事故――。製造業にとって工場やそこで使用する機械の安全性は避けては通れない大きなテーマである。こうした事故を防ぎ「安全な機械」を設計する日本発の資格制度が「セーフティアセッサ資格認証制度」である。本稿では、セーフティアセッサ資格制度の概要について紹介する。
日本では、モノづくり現場での安全構築を、現場作業者への安全教育や指示徹底に依存してきた。しかし、いまだに重大な産業事故は多発しており、最近では増加傾向にある。現場を熟知している熟練者のリストラや高齢化・定年による退職、ノウハウが不十分な若年や派遣労働者、外国人労働者の増加により、従来のやり方での現場での安全確保は難しい状況になってきている。
一方、国際社会に目を向けると、機械類の安全性に関するISO規格やIEC規格などの国際規格が次々と発行されている。安全構築の考え方がグローバルで統一されてきており、特に、国際安全規格の最上位に位置付けられるISO 12100(機械類の安全性−設計の一般原則−リスクアセスメントおよびリスク低減)では、機械類の設計者や製造者が安全性に配慮した機械の設計・製造を行うことが要求されるとしており、安全思想の普及は加速度的に進展している。
そこで日本電気制御機器工業会(NECA)は国際規格に基づく安全技術を理解してもらい、現場において安全を根付かせる仕組みの一つとして、「セーフティアセッサ資格認証制度(SA)」を設立した。同資格認証制度は、安全技術応用研究会、日本認証と連携して作ったもので、主に機械の設計者を対象に、国際安全規格に基づく機械の安全設計の能力を認定する制度として2004年に策定したという。
同認証制度では、セーフティサブアセッサ、セーフティアセッサそしてセーフティリードアセッサへと順次試験によりレベルアップできるような仕組みを採用している。また、基礎的なSA入門資格として、2009年に「セーフティベーシックアセッサ資格認証制度(SBA)」を創設。設計者や安全管理者など、技術系の職種だけではなく、現場作業者(オペレータ)、経営者、営業、総務、人事、購買など非技術系職種へも対象を広げた。より幅広い分野における安全知識を有する人材の育成を目的としている。
SA/SBA制度は機械安全分野からスタートしたが、NECA以外の企業や団体からの要望により、2011年には防爆安全分野のセーフティベーシックアセッサ資格認証制度も併せて構築している。
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