下請けからパートナーへ、元世界2位が「脱EMS」を掲げる理由:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
日本ではまだEMS事業が中心となっているが、海外では既に多くの実績を生み出しているという。ウェアラブル端末やドローン(無人航空機)、スマートアクセサリーやスマートジュエリー、通信機能搭載の服、スマートハウスなど、多彩な産業への新たな製品開発の支援を行っているという。
日本の茨城県筑西市の拠点に所属するフレクストロニクス 事業開発本部長の小泉修一氏は「国内ではEMS事業が中心だが、既に2件の案件がスタートしている。ファッション業界などでは、スマート化の流れを理解していたとしても回路設計やスマート端末の開発などは難しいケースが多い。そうした領域をサポートし製品企画などにも関与する製品開発パートナーとしての位置付けになりつつある」と述べている。
フレクストロニクスが「スケッチ・トゥ・スケール」の流れで取り組んでいる領域(クリックで拡大)出典:フレクストロニクス
これらの一方で、スポーツブランドであるNIKEとは、靴の製造領域で製造プロセスの革新で支援。従来は人手での製造を中心としており、人件費の安い地域を求めて製造拠点の移転を続けてきていたが、自動化を進めることで人件費の影響を受けない製造プロセスを構築しようとした。そのパートナーとしてフレクストロニクスが参加したというわけである。デニソン氏は「必ずしもスマート製品が拡大する流れだけに取り組むのではなく、EMS事業で得た幅広い知見をあらゆる産業に活用していく」と語る。
現在、同社ではこうした新たな取り組みを行う中で、オープンイノベーションを進めるために、米国のニューヨークやサンフランシスコ、英国のロンドンなどに「イノベーションラボ」とする拠点を設立。日本での設立も検討しているという。
「日本はイノベーションの力がある。ロボットや自動化のテクノロジーでは世界のリーダーであり、これらの企業との提携などを進めていきたい。また特定の産業とのコラボレーションについても考えていく。自動車や医療、スマートホームなどの領域に期待している」とデニソン氏は述べている。
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