3つ目のポイントが「アプリケーション活用の容易さ」である。
産業用ロボットは「半完結製品」という特殊な生産財製品だ。産業用ロボットは、それ自体がまとまった機械製品で、可搬質量、最大速度、位置繰り返し精度、動作範囲などの基本仕様が明確となっており「動く」ということだけを考えれば「完結製品」だといえる。
しかし「生産機械」として考えた場合、そのまま「ただ動く」だけでは価値は生まない。ハンドが取り付けられ、プログラムが作られ、センサーやさまざまな機器が取り付けられ、最終的には何らかの生産システムに組み込まれて初めて価値が確定する。そのため、用途や目的を実現するためには、ハンドなどの新たなハードウェアを組み合わせ、これらが機能するようにソフトウェアをプログラムするインテグレーションの作業が発生する※)。
※)関連記事:いまさら聞けない産業用ロボット入門〔後編〕
ここに産業用ロボット利用の障壁がある。生産ラインを組み替えるたびに新たなハードウェアを開発し、プログラミングを行わなければならないため、大きな負担が発生するからだ。人との協調ロボットが登場したとしてもこれらの手間や時間を軽減するような仕組みが生まれなければ、目的の1つとされる「柔軟な生産ラインの実現」は難しい。
こうした状況を解決するような技術が徐々に出てきている点が、協働ロボットの普及の後押しをしているというわけである。
例えば、ユニバーサルロボットが展開しているのが「Universal Robots +」という仕組みである。これはユニバーサルロボットに関連するアプリケーションの開発と展示を可能とした一種の開発者コミュニティー兼アプリマーケットのような存在である。開発者向けにはSDK(ソフトウェア開発キット)を公開し、ハンドなどのハードウェアとソフトウェアを組み合わせた開発が行える。これらにより、作業のプログラミングやラインへのインテグレーションの手間や負担を軽減し、実装期間の短縮と効率化を実現できる。
実際に発表会場では、「Universal Robots +」で出展されているロボットハンドとソフトウェアにより、対象物をロボットがつかみ、ゴミ箱に捨てるというような動作のデモを行った。デモでは、ユニバーサルロボットの簡単にティーチングできる機能を利用。4つの通過点とハンドの開閉の指示を、タッチパネルでの選択と、人手による位置の設定を行うだけで、5分程度で実現できていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.