いまさら聞けない産業用ロボット入門〔後編〕産業用機器 基礎解説(1/4 ページ)

日本が「ロボット大国」とも呼ばれる中、中心を担う産業用ロボットの概要と将来像について紹介する本企画。〔後編〕では、産業用ロボットと最新技術と将来像について、紹介したいと思います。

» 2014年04月14日 10時00分 公開
[小平 紀生/日本ロボット学会 会長/三菱電機,MONOist]
ロボット

 世界に普及する「ロボット」で中心を担う「産業用ロボット」の基礎を解説する本企画。〔前編〕では、産業用ロボットの概要と歴史についてお伝えしましたが、〔後編〕では最新技術と将来像、またロボット産業の抱える課題について紹介します。

>>〔前編〕はこちら




ロボット産業のグローバル化とシステム指向

 図8前編からの通し番号です)に、日本製ロボットの向け先別出荷台数の推移を示します。

 日本ロボット工業会の月次報告でもありますが、産業用ロボットの出荷は、2014年に入ってからも引き続き好調を持続しています。旺盛なアジア需要に支えられた出荷台数は拡大傾向を持続しています。しかし現在、日本のロボット産業はグローバル市場の拡大に伴う、いくつかの重大な課題に直面しています。ここでは、その中でも日本国内市場とは大きく異なる「現地の技術力」「国際競争」の2点について、ロボット産業独特の問題点も含め解説します。

図8 図8:日本の産業用ロボット市場のアジアシフト(クリックで拡大)

求められる現地の技術力

 産業用ロボットは、いわば「半完結製品」という特殊な生産財製品です(図9)。

 例えば、NC旋盤などの工作機械はエンドユーザーが目的に応じた機種選定が可能で、導入すると得られる効果が明確な「完結製品」です。一方、サーボモーターやインバータなど何らかの生産機械に組み込まれる製品は、生産機械の目標とする性能を実現するのに必要なものが選定される「部品」です。

 産業用ロボットは、それ自体がまとまった機械製品で、可搬質量、最大速度、位置繰り返し精度、動作範囲などの基本仕様が明確となっており「動く」ということだけを考えれば「完結製品」だといえます。しかし「生産機械」として考えた場合、そのまま「ただ動く」だけでは価値はありません。ハンドが取り付けられ、プログラムが作られ、センサーやさまざまな機器が取り付けられ、最終的には何らかの生産システムに組み込まれて初めて価値が確定する「半完結製品」だといえます。

図9 図9:産業用ロボットは半完結製品(クリックで拡大)

 従って、価値の高いロボットシステムを実現するには、ロボットの機能や性能もさることながら、システムインテグレーションの巧拙が重要な要因となります。日本国内や欧米では、1980年代から優れた自動化技術を蓄積してきたシステムインテグレーターが多数存在し、ロボット産業を支えてきました(図10)。

 システムインテグレーターとは、もともとは要素を統合化して全体が目的とする働きをするように仕上げる役割の総称です。システムという言葉が、情報処理技術でクローズアップされてきた歴史から、情報処理システムを仕上げる企業を指すことが多いですが、ここでは物理的な設備構成を含む生産システムの構築を担当する企業、あるいは部門を指します。従って、ここでいうシステムインテグレーターに必要な技術は、生産技術、製造設備の設計・製造・運用・保守技術、そして生産システムを制御・統括する情報処理技術、とモノづくりに関わる技術全般にわたります。

図10 図10:システムインテグレーターの位置付け(クリックで拡大)
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