ダイセルは、プロセス産業におけるモノづくり革新の手法である「ダイセル式生産革新」で知られている。会見に登壇した、ダイセル 取締役 常務執行役員の小河義美氏は「熟練工が大量に定年退職する2007年問題について、当社はそれよりも早いタイミングで迎えていた。そこで、熟練工のノウハウや技能の継承や、安心して作業を行える環境づくりを目指したのがダイセル式生産革新の始まりになる。面積約100万m2の網干工場(兵庫県姫路市)ではかつて、間接部門を入れて約3500人が勤めていたが、ダイセル式生産革新によって約1000人に減らすことができた。現在はさらに革新を進めて、1直当たり約20人、間接部門を含めて300人以下で回せるようになっている」と語る。
網干工場におけるこの究極の取り組みは、プロセス産業のみならず、組み立て産業からも注目を集めている。同工場の工場見学は8カ月待ちが10年間続いているという。
人員削減=生産性向上に注目が集まるダイセル式生産革新だが、その背景には「人にやさしいモノづくり」というコンセプトがある。今回の画像解析システムの共同開発でも「モノづくりは最終的に現場で人が関与する以上、どうしてもミスは発生する。そんな現場作業をバックアップする、ポカをしても安心できるシステムが欲しい」(小河氏)という考えがあった。
また、画像解析システムの機能の1つである人物動作解析を開発する上で重要だったのが、逸脱状態を見つけ出す基礎データとなる標準作業モデルの構築である。森田氏は「ダイセルの作業手順がしっかりと標準化されていたこともあって、日立で行った標準作業モデル構築のための画像撮影作業は1日で完了した」と説明し、今回の画像解析システムを実現する上でダイセル式生産革新が重要な役割を果たしていることを示唆した。
画像解析システムを適用したエアバッグ用インフレータは組み立てラインで製造されるものであり、ファクトリオートメーションに分類される。しかし、ダイセルの主力事業は、プロセスオートメーションを用いて生産する化学品である。今回の画像解析システムは、プロセスオートメーションにも展開可能なのだろうか。
小河氏は「プロセスオートメーションの場合、化学品を連続で生産する定常作業と、定常作業を止めて行うメンテナンスや品種切り替えといった非定常作業に分けることができる。現時点でトラブルが多いのは非定常作業だ。なぜかというと、1〜2年に1回の頻度でしか行わないため、その非定常作業のノウハウを習得する機会が少ないからだ。この非定常作業に画像解析システムを適用すれば、課題だったトラブルを大幅に削減できるだろう」と述べている。
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