3つ目のテーマのなったのが「CADの明日と10年後の姿」だ。
原島氏が取り上げたのがCADとクラウドとの関係である。「CADの大きなテーマとしてクラウドでやるのか手元のPCで使うのかという選択があると思う。クラウドのメリットとして、いつでもどこでもCADができるというのがあるが、それほどニーズがあるか疑問だ。ムーアの法則を考えれば、手元のPCやタブレット端末でもCADを扱うのに十分な性能が得られるのではないか」(同氏)。
そして来場者に対して「10年後の2026年はクラウドのコンピュータパワーを使ったCADを使っていると思う人は挙手してほしい」と問いかけたところ半数弱が挙手した。原島氏は「クラウドは何よりツールベンダーにとって便利で、古いバージョンのユーザーに悩まされずに済む。システム管理者も管理しやすい。しかし、使う側のユーザーにとってのメリットが明確になっていないと感じる」と述べた。中島氏も「クラウドはツールベンダーがもうけるためのシステムであって、ユーザーのためを考えてのものではないと思う」と賛意を示した。
CADのクラウド化を推進しているオートデスクに所属する藤村氏は「クラウドによる3Dデータシェアは明らかにメリット大きい。今まで当たり前だった、データを圧縮してからサーバにアップロードするといった作業が不要だ。今後10〜20年を考えれば、今までのCADでできなかったことがクラウドで可能になるだろう」と反論する。クラウドでできることの一例として、Microsoftのスマートグラス「HoloLens」を用いた複合現実(MR:Mixed Reality)技術を挙げた。また3Dスキャナのスキャンイメージをメッシュ化してからCADデータに変換し、3Dプリンタで出力するという異なるツールを使う流れも、クラウドによってシームレスに実行できるようになるとした。
原島氏は「人と人をつなぐ仕組みとしてクラウドを利用していくのは大賛成」と語り、中島氏も「クラウドはインフラとしては大賛成。ただ『CADはどこで』と聞かれれば、今後もローカル(手元のPC)でやっていると思う。大切なことはローカルでやり、比較的どうでもいいことはクラウドに任せるようになっているだろう」と述べた。
最後に、パネルディスカッションのまとめの中で出た原島氏の意見が興味深かったので紹介しよう。「CADの10年後という話があったが、本当に考えなきゃいけないのはわれわれ(ツールベンダー)の10年後かもしれない。進化のポイントは『協働』で、デザイナーが知恵を共有できる環境を作ることに大きな意味が出てくる。そしてデザイナーの価値づくりに貢献できることが重要になると思う」(同氏)。
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