米ソリッドワークスは、年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS World 2016」を米国テキサス州ダラスで開催。最初の基調講演ではSOLIDWORKSブランドのCEOであるジャン・パオロ・バッシ氏が登壇し、ジェネレーティブデザインのアプローチを組み込んだWebブラウザベースの設計ツール「SOLIDWORKS Xdesign」の概要が発表された。
米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、ソリッドワークス)は、ワールドワイドの年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS World 2016」(会期:米国時間2016年1月31日〜2月3日)を米国テキサス州ダラスで開催中だ。
事実上の会期初日となる同年2月1日からは、SOLIDWORKSブランドの最高経営責任者(CEO)であるジャン・パオロ・バッシ(Gian Paolo Bassi)氏をはじめとするソリッドワークスおよびダッソー・システムズのキーマンや各業界から招かれた有識者、SOLIDWORKSユーザーなどが多数登壇。本稿では、バッシ氏が登壇した同年2月1日の基調講演の模様を紹介する(一部製品の紹介に関しては、プレス向けインタビューから補足している)。
冒頭、バッシ氏は「われわれSOLIDWORKSは、ユーザーの皆さんがより良いイノベーションを生み出すためのお手伝いをしたい。そのためにSOLIDWORKSは『Make Great Design Happen』、すなわち素晴らしい設計を実現するためのクリエイティビティを追求していく。イノベーションというのは、単にパワフルな設計ツールを利用するだけでは起こせない。イノベーションを起こすためには、例えば、意味のあるコンテンツを容易に発見でき、それを再利用できるようなシステムが必要になる」と説明。
そして、そうしたシステムの中で設計に関するさまざまな情報を共有し、成果物を評価し、それを何度も繰り返し行える仕掛けや、重要なリソースにアクセスする仕組みが必要になるとし、「イノベーションとは多くの人々の集合知から生まれるものであり、そのために『人』『アプリケーション』『インフラ』のエコシステムが不可欠である」とバッシ氏は述べた。このエコシステムの考えの下、パワフルでオープンなプラットフォームを構築し、今日ビジネスを成功に導いている代表的な企業がGoogleやAmazonであるという。
バッシ氏は「SOLIDWORKSには既にイノベーションの実現を支える構成要素である『人』『アプリケーション』『インフラ』が存在する」とし、SOLIDWORKSはイノベーションプラットフォームとしてユーザーとともにあり、それが基本戦略である旨を強調した。
その後、イノベーションの構成要素の1つである「人」について紹介。学生を含む多くのユーザー、SOLIDWORKS認定ユーザーが世界中におり、各地で活発なコミュニティーが形成されている点、そして多くの製品開発の中でSOLIDWORKSが数多く使われている点を挙げ、そうしたユーザーたちをつなげることの重要性を説明。バッシ氏は「われわれは、こうしたユーザー同士をつなげるためのプラットフォームを提供していきたい。Uberのように、世界中の優秀な学生やユーザーをつなげ、見つけて仕事を依頼できる仕掛けも作ることができるかもしれない。そうしたことを実現するためには長期的なビジョンを持ち、戦略的な投資が必要である。われわれは、ダッソー・システムズの一部であることでそれらを可能なものにしている」と語った。
続いて、バッシ氏は2つ目の構成要素である「アプリケーション」について言及。SOLIDWORKSは、バージョンアップのたびに追加される新機能や機能改善の多くがユーザー要望に基づいたものであるという。これはイノベーションプラットフォームとしてユーザーとともにあり続けるというSOLIDWORKSの基本方針によるものであり、「必要とされるものを提供するのがイノベーションプラットフォームの役割である」とバッシ氏は強調する。
その代表例として紹介したのがハイエンドレンダリングツール「SOLIDWORKS Visualize」だ。同製品はフォトリアリスティックなレンダリングが可能なツールで、設計中のプロダクトの完成を待たずともPC上で実物に限りなく近いバーチャルな完成品を確認できる。これにより、より良い意思決定が可能になるだけでなく、3次元の設計データをマーケティングツール(製品資料やカタログなど)にも展開し役立てることが可能になる。
また、「よりスマートでIoT(Internet of Things)のニーズを満たすためにはエレ/メカの連携が不可欠だ」(バッシ氏)とし、SOLIDWORKSのイノベーションポートフォリオに新たに加わる製品として「SOLIDWRKS PCB」を紹介。同製品は米Altium(アルティウム)と共同開発したもので、同製品により「未来の製品設計が可能になるだろう」(バッシ氏)としている。
最後の構成要素である「インフラ」についてはIoT時代の到来を例に、バッシ氏は「イノベーションプラットフォームはさまざまなユビキタスデバイスで収集された情報に簡単にアクセスし、収集したデータをパターン化してそれを基に、意思決定を迅速化させて、問題解決や新たなビジネスチャンスの獲得に生かす必要がある」と説明し、今回イノベーションプラットフォームの重要な一部として「Manufacturing Services」を発表。「これはユーザーとメーカーとがお互いに存在を見つけることができ、つながり、作ることができるマーケットプレースのようなもの。われわれはオンラインで本を買うように、製造そのものをより簡単にしていきたい。Manufacturing Servicesは間もなくイノベーションプラットフォームに搭載されるでしょう」とバッシ氏。
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