京都大学は、体内時計を調節する新たなオーファンGPCR「Gpr176」の同定に成功したと発表した。体内時計の中枢を標的とした、新しいタイプの生体リズム調整薬の開発につながるとしている。
京都大学は2016年2月18日、生体リズム調整薬の開発に向け、体内時計を調節する新たなオーファンGPCR「Gpr176」の同定に成功したと発表した。同大学薬学研究科の土居雅夫准教授と岡村均教授らの研究グループによるもので、成果は同月17日、英科学誌「Nature Communications」で公開された。
生体リズムの異常を伴う不眠症や生活習慣病などは、生体リズムをつくる時計の本体を発見し、その仕組みを解明してリズム全体を操ることで根本的な解決につながる可能性が指摘されている。
同研究グループは、全身のリズムを統率する時計のセンターとして機能する、脳内の視交叉上核(SCN)に着目。今回、生体時計の中心的存在であるSCNの機能を調律するものとして、Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーに属するオーファン受容体分子Gpr176を新たに同定した。
GPCRは、薬理学上最も重要で効率の良いターゲットとして知られる分子群だが、その多くが機能未定のオーファン受容体だ。同研究ではまず、SCNに存在するオーファンGPCRを網羅的に検索した。その結果、SCNに強く発現し、遺伝子欠損によってマウス個体の活動リズムが変調するオーファン受容体Gpr176を同定した。
さらに、このオーファンGPCRは、これまでに知られる多くのGPCRとは異なり、Gzという特殊なGタンパク質を介して下流のcAMPシグナルを抑制する作用があるという。つまり、SCN内においてGpr176が発するGzシグナルにより、体内時計のスピードが調節されることが分かった。
同成果から、Gz-Gpr176の活性を制御することができれば、体内時計の中枢を標的とした、新しいタイプの生体リズム調整薬の開発が可能になるという。また、Gpr176は末梢には発現せず中枢のSCNにのみに強く発現するため、この分子を標的とすれば、生体時計の中枢に作用し、末梢の臓器には影響しない創薬が可能になるとしている。
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