パワートレインは4機種。既存の排気量2l(リットル)直列4気筒ガソリンエンジン(184hp/300Nm) と排気量3lのV型6気筒ディーゼルエンジン(258hp/620Nm)に加えて、排気量2l直列4気筒ディーゼルエンジン(195hp/400Nm)や排気量2l直列4気筒エンジンにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムが新設された。
従来、Eクラスの全面改良にあたっては、ボディとシャシーを刷新し、フェイスリフト時に新設計のパワートレインを投入するのが慣例だったが、今回は排気量2l直列4気筒ディーゼルエンジンを積んだ「220d」が新設されたことに加えて、内製の9速ATとモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムも初搭載となる。
ディーゼルエンジンは、2015年10月にドイツのアーヘン市で開催されたエンジンと車両の学会で発表した「OM654」だ。フォルクスワーゲンによるNOx排出量不正問題で話題に上ったリアルドライブエミッション(実走行での排出量)への対応も盛り込んだという。具体的には、エンジンブロックをアルミ化し、プラズマ加工を施したスチール製のシリンダーヘッドを組み合わせることにより、大幅な軽量化を図った。また、低圧と高圧の2種のインタークーラーを採用し、耐久性と排ガス処理能力を両立。CO2排出量はわずか102g/km、燃費にして3.9l/100kmと驚きの良好な燃費だ。可変ベーン付きターボチャージャーも採用し、低回転域からブースト圧を確保できる。
もちろん、NOxをはじめとする排気ガスのレベルは欧州の排気ガス規制「Euro 6」をクリアしている。一方、「E350e」は9G‐トロニックにモーターを内蔵し、排気量2lの直列4気筒エンジンと組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを積む。システム出力で279HP/600Nmを発揮する。一方で、2.1l/100kmと良好な燃費を誇り、CO2排出量は49g/kmとなる。
シャシーに関しては、同社が重視する安全性と高度運転支援装置の進化が目覚ましい。SクラスやCクラスでの採用が進んでいるが、新型Eクラスでは次世代の先進運転支援システム(ADAS)とされるドライブパイロットへと進化させた。
自動追従走行機能「ディストロニック」は時速210kmまでの追従が可能。センターラインが不明瞭でも時速130km以下では車両と車両の距離に配慮して、クルーズコントロールを作動させる。車線変更を自動で操舵してくれる「アクティブレーンチェンジアシスタント」は、ミリ波レーダーとカメラによって検知を行っており、今後もより高度なADAS開発に進んでいく予定だ。
新型Eクラスは、外観上も大きく変化したことに加えて、インテリアの質感向上や作り込みによって、最上級モデルのSクラスと肩を並べる内容を得た。さらに、最新のHMIを搭載し、準自動走行と呼べる機能を搭載する。快適性や環境性能といったメルセデス・ベンツというブランドに期待されるものも含めて、自動車の将来をけん引する1台といえる。
川端由美(かわばた ゆみ)
自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。
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