ベンツの未来系「Fモデル」がCESの基調講演で初公開される意義2015 CES 基調講演リポート(1/3 ページ)

「2015 International CES」の基調講演にダイムラー会長のディーター・ツェッチェ氏が登壇し、自動運転車の未来系を示すコンセプトカー「Mercedes-Benz F 015 Luxury in Motion」を初公開した。同社のフューチャーモビリティのコンセプトである「Fモデル」が、モーターショー以外で初公開されるのは異例のことだ。

» 2015年01月15日 09時00分 公開
[川端由美,MONOist]

 2015年1月6日(米国時間)、世界最大の消費者向けエレクトロニクス展示会である「2015 International CES」が開幕した。1400万m2という広大な会場面積に約2700社が出展し、入場を18歳以上の業界関係者に絞っているにもかかわらず、15万人が来場する。

 CESの開幕に先駆けて同年1月4日から開催されたプレスデーでは、これまで以上にCESにおける自動車産業の存在が大きくなってきたことが感じられた。最大の理由は、エレクトロニクス大手各社が「IoT(Internet of the Things:モノのインターネット)」を強調した点だ。ご存じの方も多いかもしれないが、IoTとは、IT機器以外の「モノ」がネットワークにつながることであり、当然、自動車もIoTの1つである。

 ここ数年、スマートフォンによってけん引されてきたエレクトロニクス業界の成長が鈍化しつつある中、最後の「インターネット不在地帯」と言われてきたクルマに関しては、まだ伸びる余地が多いと期待されている。

 特に、“CESの顔”とも言えるプレスデーの基調講演をDaimler(ダイムラー)会長のディーター・ツェッチェ氏が行ったことは印象的だった。

 もちろん、これまでにも自動車メーカーのエグゼクティブがCESで基調講演を行ってきたことはある。しかしながら大抵はITを軸にしたものだった。例えば2014年に基調講演を行ったAudi(アウディ)は、会長のルパート・シュタットラー氏に加えて、NVIDIAのCEO兼共同創立者のジェンスン・フアン氏が登壇して、新型「TT」に搭載されるデジタルコックピットに関するプレゼンテーションを行ったし、2012年のダイムラーによる基調講演では自動車の高度なデジタル化といったCESらしいテーマを選んでいた。

「2015 International CES」の基調講演に登壇したダイムラーのディーター・ツェッチェ氏 「2015 International CES」の基調講演に登壇したダイムラーのディーター・ツェッチェ氏

 しかし、今回のダイムラーは未来を見据えたコンセプトカー「Mercedes-Benz F 015 Luxury in Motion(以下、F 015)」を持ち込み、まるでモーターショーであるかのようなプレゼンテーションを行ったのだ。「F」とは、ダイムラーが開発するフューチャーモビリティのコンセプトに与えるコードネームであり、これまでにF 100からF 800までが発表されてきた。これらは燃料電池車だったり、HCCI(予混合圧縮着火)エンジンを用いたハイブリッド機構だったり、その時代ごとの先進的な技術を搭載しており、同社の125周年を祝って発表された「F 125!」以外はモーターショーの花形として発表されてきた歴史がある。

華々しい映像とともに「F 015」が壇上に登場華々しい映像とともに「F 015」が壇上に登場F 015とともに登場したのは、CESの主催である米国コンシューマエレクトロニクス協会の社長兼CEOであるゲーリー・シャピロ氏 華々しい映像とともに「F 015」が壇上に登場。F 015とともに登場したのは、CESの主催である米国コンシューマエレクトロニクス協会の社長兼CEOであるゲーリー・シャピロ氏(クリックで拡大)

 今回のCESの基調講演でツェッチェ氏は、「都市化が進み、渋滞に悩まされたり、大きなスペースを必要とするため駐車する場所もなかなか見つからなかったりなど、モビリティとしてのクルマの魅力は薄れてきている。その一方で、将来的には、プライベートな空間と時間を楽しむためのラグジュアリー・グッズとして発展して行くだろう」と語った。

 そのためには、自動運転、電気自動車(EV)、カーシェアリングといったダイムラーがこれまでに取り組んできた分野での知見が重要だという。またコネクティビティの導入によって、自動車はもっとラグジュアリーになり、オフィスと自宅を結ぶ第三の空間としての価値を見いだされるとした。

「F 015」が示す将来的なモビリティの在り方 「F 015」が示す将来的なモビリティの在り方(クリックで拡大)
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