メルセデス・ベンツは2015年、「GLS」「Sクラス」「AMG-GTロードスター」など9種類の新モデルを発表した。そして2016年、同社の基幹車種である「Eクラス」の新モデルを市場に送り出す。ツェッチェ氏は、新型Eクラスのインテリジェンスが「ひとクラス上」であることを強調し、今回、発表された新型Eクラスを「インテリジェンスのマスターピース」と位置付けた。
次に、MIT(マサチューセッツ工科大学)の主任研究員であるアンドリュー・マカフィー氏に講演のバトンを渡した。彼は「Enterprise2.0」や「機械との競争」といった著書の中で機械と人間が共に働く日を予言し、大きな話題を呼んだ人物だ。
「機械が活躍する領域を広げてきている。かつては、計算を毎日する人たちが知的だと思われていたこともある。しかし今日では、最も知的なゲームだと考えられていたチェスの世界最強のプレイヤーがコンピューターになった。こうしたスーパーインテリジェンスに対して恐怖感すら感じる人がいるかもしれない。今では“機械のインテリジェンス”は人間よりあらゆる面で優れるのは事実だ」(マカフィー氏)。
スティーブン・ホーキンズ氏やイーロン・マスク氏、ビル・ゲイツ氏といった人たちまでもが案じる「悪魔の機械」とは、機械が自律的にコミュニケーションをはじめ、その結果として人間が不要になり、場合によっては人に戦いを挑むことになるというものだ。
マカフィー氏は、「(悪魔の機械の実現は)論理的には可能だが、そのようにスーパーインテリジェンスに恐怖を抱くのは間違っている」という。
人工知能(AI)が活躍する領域を拡大解釈するのは杞憂であり、火星で人口過剰を心配するのと同レベルだという。マカフィー氏の考えは楽観的にも思えるが、裏付けとなるデータに基づく論証だ。
例えば、人口増加によって資源や食料の需要が地球で供給できる容量を上回り、貧困が増えている。一方で、貧困から抜け出している人の数は増えているという。また、21世紀に入って以降、それまで増加し続けていたアメリカでの資源の消費量が減ってきているという事例もある。限られた原資の中で、よりよくすることがインテリジェンスだ、とマカフィー氏は言う。
このプレゼンテーションは、もちろん、自動運転に向かう自動車の将来を語るための前ふりだ。従来、クルマの運転は主に人間が主体となって機械を操作してきたが、今後は人間と機械がともに情報を処理して運転することになる。例えば、クルマに信号を守るようにプログラムすると、止まったまま動かないといったことが起こる。これは、機械の忍耐力に限りがないという良い面と、反対に機械は融通がきかないという悪い面があるからだ。
しかし今後は、機械が複雑な状況を完全に理解する必要があるという。そして今後、コネクテッドカーがインテリジェントにつながり、他の車両やインフラと情報を共有することになれば、自動運転の技術はようやく“小学校卒業”のレベルに達するという。
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