オートデスクは、製造業向け3次元CADソフトウェア「Inventor」の最新バージョン「Inventor 2016 R2」の提供を開始。コンピュータが最適形状を導き出し、設計者に提示する「ジェネレーティブデザイン」の設計アプローチが組み込まれている。
オートデスクは、製造業向け3次元CADソフトウェア「Inventor」の最新バージョン「Inventor 2016 R2」の提供を開始。2015年10月30日より、Subscriptionユーザー向けにダウンロード提供を行っている。
今回の最新バージョン(Inventor 2016 R2)は、同年4月15日にリリースされた「Inventor 2016」に大きく3つの新機能が追加された製品。現在利用中のInventor 2016をアンインストールすることなく、追加モジュールのみをインストールするだけで利用できるという(関連記事:フリーフォーム機能や他社CAD連携、3Dプリンタ利用がさらに強化された「Inventor 2016」)。
本稿では、Inventor 2016 R2に含まれる3つの新機能について紹介していく。
現在、オートデスクはCAD設計者の業務を見直し、「Computer Aided Design」の“Aided(支援)”の部分について新たな方向性を提案しようとしている。「3Dプリンタを始めとする新しい製造方法の利活用が進んでいる今、モノの形をデザインするという従来人間(設計者)が行っていた部分を、コンピュータにやらせることで、これまでの製造・加工方法に捉われない新しい形状が作り出せるのではないか」とオートデスク 技術営業本部 製造アカウント エンジニアマネージャー 加藤久喜氏は語る。
こうした考えの下、オートデスクでは設計者が設定した仕様・条件をコンピュータで解析し、要求条件に適した形状を導き出して、設計者にフィードバックする「ジェネレーティブデザイン」という設計アプローチの取り組みを進めている。これまで設計者の技術や経験、過去の設計資産、所有する加工機など、あらゆる条件を基にモノの形状が決められてきたが、コンピュータが提案してきた形状を参考にすることで、これまで思い付かなかったような新しい形状を実現することが可能になるという(関連記事:設計は「ソフトが代替案を考える」時代へ、有機的なデザインをすぐに演算)。
今回のInventor 2016 R2では、このジェネレーティブデザインという新たな設計アプローチの“第1ステップ”に該当する大きなアップデートが含まれている。
現在、Inventorは「パラメトリック」に加え、「ダイレクト」「フリーフォーム」といったさまざまなモデリング手法が取り入れられ、設計・製造トレンドの変化を踏まえた進化を遂げている。そして、今回の新バージョン(Inventor 2016 R2)では、ジェネレーティブデザインの考えを取り入れた「トポロジー最適化」という概念が含まれているという。
「トポロジー最適化とは、ある形状から不要な部分を抜いていき、最適な形状に置き換えるという軽量化のアプローチだ。もちろん、トポロジー最適化の結果を強引に設計に適用するのではなく、最適化された形状を参考にしながら“設計者の判断で設計を見直す”というやり方を推奨している」(加藤氏)。つまり、肉抜きや肉盗みのような設計者の知識・経験などで行われていた従来の設計アプローチを、コンピュータが論理的に提示して設計の判断材料として提示してくれるというわけだ。
「われわれとしては、まずはコンピュータで最適な形状を導き出して、それを参考に設計者自身がデザインのブラッシュアップを行うというアプローチで、設計を『Aided(支援)』していきたいと考えている。コンピュータの力をうまく設計に取り込むことで、人間の力だけでは実現できないような、より最適な形状に近づけていくことが可能になる」と加藤氏は述べる。
Inventor 2016 R2では、このトポロジー最適化の機能を「シェイプジェネレータ」と呼び、従来の構造解析の手順と同じように、UIメニューに従いながら固定位置や力、軽量化の割合、変更してほしくない領域の指定などを行っていくことで、最適形状の解析が行える。解析が完了すると、最適形状が画面上に表示され、最適形状をそのまま採用して軽量化するオプションと、結果を元の設計データに重ね合わせて、必要な部分をスケッチして設計を進めていくオプションのいずれかを選択し、設計のブラッシュアップが行えるという。
「近年の3Dプリンタの利活用からも分かる通り、今後、新しい製造方法に対応した設計アプローチが重要になってくる。そういう観点から『軽量化』は3次元CADのメリットを表すキーワードになってくるのではないか。この機能を活用して、新しいチャレンジに取り組んでもらいたい」(加藤氏)。
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